なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由

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2025年12月01日

  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 柄澤 悠

2019年より、ベトナム株式市場発展支援の国際協力プロジェクトに従事している。市場動向を日々追う中で、最近、成長スピードと市場の熱気が一層高まっていると感じる。

ベトナムの株式市場はこの6年間で飛躍的な成長を遂げた。ベトナム経済はコロナ禍でもプラスの成長を維持し、その後も7~8%の成長率を維持している。株式市場は一時停滞したものの2021年以降急回復した。2025年11月時点で上場会社は720社、未上場公開会社を含めると1,500社以上の株式が流通し、時価総額は約50兆円と2019年の約27兆円から倍増している(※1)。証券口座数も2019年末の約230万口座から現在は1,130万口座に達し、人口1億人超のベトナムで、その10%超が株式投資家となったことは注目に値する。この背景には、株価上昇による投資熱の高まりと、オンライン取引環境の整備がある。

こうした株式市場の成長の原動力となったのが2019年に大幅に改正された証券法に基づく「2030年までのベトナム証券市場発展戦略」である。この発展戦略にしたがって、上場会社の質の向上に向けた情報開示やコーポレート・ガバナンスの強化、ファンド市場の改革、株式公募・上場の高度化、市場監視の強化、外国人投資家の利便性向上、証券取引所の再編など、広範な取り組みが推進されている。これらの施策が結実し、2025年10月にFTSEラッセルの市場区分において「フロンティア市場」から「第二新興国市場」に格上げされた(※2)。これにより、国際資本市場でのベトナムのプレゼンスが高まり、外国人投資家からの資金流入がさらに加速すると期待される。さらに、国内ファンドや個人投資家による投資にも波及していくことも想定される。投資家の厚みが増すことで、ベトナム企業のエクイティ資金調達の機会のさらなる拡大も見込まれる。

今後、外国人持株比率規制の緩和、英語による情報開示、財務開示やサステナビリティ開示における国際基準導入に向けた対応が進めば、ベトナム市場の魅力はさらに高まる。現在のトー・ラム政権は経済成長志向が極めて強く、ホーチミンとダナンの国際金融センター(IFC)構想を掲げ、法制度整備を進めるなど金融資本市場の発展への強固なコミットメントを示している。これらの制度改革や市場区分の格上げ、規制緩和への期待が重なり、今まさにベトナム株式市場は世界の投資家から強く注目されている。

では、なぜ今ベトナム市場なのか。その理由は、世界屈指の経済成長率、制度改革による市場の質的向上、国際資本市場での存在感、そして投資家層の拡大による新たな投資機会の創出にある。ベトナム株式市場は今後もさらなる飛躍が期待される。

(※1)上場会社はホーチミン証券取引所・ハノイ証券取引所で、未上場公開会社は店頭公開市場UPCoMで流通している。
(※2)FTSEラッセルはロンドン証券取引所グループ傘下のインデックス算定会社で、世界の株式市場の発展段階や投資リスクを明確にし、インデックス構成のために「先進国」「先進新興国」「二次新興国」「フロンティア」の4つに分類している。

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