介護保険外サービスの品質保証
2025年06月13日
介護分野では人手不足が深刻なため、需要に応じた介護保険サービスの拡充が難しくなっている。特に訪問系サービスでは、4割以上の事業所が職員不足のために利用者の受け入れを抑制しているなど、状況は深刻である(※1)。こうした状況は、利用者にとってマイナスであることはもちろん、その家族、特に仕事をしながら介護を行うビジネスケアラーにとっても介護機会が増え、肉体的・精神的に大きな負担となる。
介護保険サービスだけで十分なニーズが満たせない場合、検討されるのが保険外サービスの利用だろう。しかし、保険外サービスに関する情報不足や質の懸念などから、ケアプランを作成するケアマネージャーもその利用を提案しづらい状況にある。適切な保険外サービスを選択し、安心して利用するためには、一定の品質を保証するような仕組みが必要だ。
そこで、経済産業省は2019年に、「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」を策定した。これは、ヘルスケアに関係する業界団体等に対して自主的なガイドライン・認定制度の策定を促すとともに、その際に踏まえるべき観点等を示した指針である。業界団体が自ら一定の品質基準をガイドラインで定めることで、提供されるサービスが、高齢者やその家族、ケアマネージャーにとって安心できる選択肢となることが目指されている。
この指針を踏まえ、2025年5月12日、介護関連サービス事業協会(2025年2月27日設立)は、介護保険外の生活支援サービスおよび配食サービスに関するガイドラインを公開した。また、ガイドラインに基づいて審査・評価を行い、一定の基準を満たしたサービス事業者に「100年人生サポート認証」を付与する計画も示した(2025年8月より認証審査の受付開始)(※2)。認証された事業者は、業界団体の定める基準をクリアしたサービスを提供していると評価されるため、高齢者やその家族等はサービス利用の判断基準として活用することができる。認証制度の対象業種・サービスは、生活支援サービス、配食サービス以外にも順次拡大される予定である。
団塊の世代がすべて後期高齢者になるなど、今後、介護需要のさらなる増加が見込まれる。介護保険サービスの拡充が容易でない中、サービスの隙間を埋めるだけでなく、多様なニーズに対応して高齢者やその家族等の生活の質を向上させる保険外サービスは、有効な選択肢となるだろう。質の高い保険外サービスを安心して利用できる環境がますます重要になる。
(※1)公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」(2024年7月)
(※2)一般社団法人介護関連サービス事業協会ウェブサイト「2025年度 ご入会および認証取得について」(2025年6月10日閲覧)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
政策調査部
主任研究員 石橋 未来