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外為法改正が株式市場に与える影響

2019年12月03日

金融調査部 主任研究員 金本 悠希

11月22日、外国為替及び外国貿易法(外為法)の改正が国会で可決され、成立した。2020年春に施行される見込みである。今回の改正は、株式市場で大きなウエイトを占める外国投資家に大きな影響を与える可能性があるとして関心が高い。

外為法は、安全保障等の観点から外国投資家による日本への投資を規制しており、外国投資家が電力業や通信業等の上場会社の株式を10%以上取得する場合は、事前に届出を求め、政府が審査を行う。

今回の改正では、欧米の規制強化の流れを受け、10%の基準を1%に引き下げるのと同時に、ポートフォリオ投資(経営に関与しない)は事前届出と審査を免除する制度を導入した。

現行規制では、外国投資家は規制業種についても10%までは自由に株式を取得できるのに対し、改正後は、1%以上取得しようとする時点で原則として事前届出を行わねばならない。審査が完了するまで株式を取得できないし、審査の結果、取得を認められない可能性もある。そのため、改正内容が明らかになった時点で、外国投資家や市場関係者から大きな反発が生じた。

反発を受け、財務省が事前届出が免除される場合を明確化し、ある程度懸念は収まった。外国銀行や外国運用会社等は条件を満たせば、取得割合が10%未満の場合は事前届出(と事後報告)が不要であり、結局、改正後も現行規制と変わらない。

しかし、今回の見直しは、外国投資家や市場関係者から、1%の基準は低すぎる、コーポレート・ガバナンス強化の流れに逆行するなどの批判が強い。

1%への引き下げは、経済産業省内の審議会の小委員会が10月8日に公表した報告書で提言された。提言の背景として報告書は、海外において、約1%保有する投資家が投資先の会社に事業の譲渡や廃止を提案したり、取締役の派遣を通じて、経営に影響を与える事例が生じているため、株主提案権が生じる株式保有割合1%を目安に基準を引き下げることを主張している。

確かに、武器製造など安全保障に関わる会社について、悪意のある投資家が役員を派遣したり、重要な事業を廃止させたりすることは、我が国の安全保障の観点から規制すべきである。しかし、そのためには「役員の派遣」「重要事業の譲渡・廃止」を行おうとする時点で、事前届出・審査の対象に追加すればよい。1%以上株式を取得しようとする時点で事前届出を求めることは、問題のない投資まで阻害してしまう。

そのため、問題のない投資について事前届出免除制度が導入されるが、事前届出免除制度が問題のない投資の全てをカバーしているわけではない。ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)や年金基金は、純投資だったとしても、武器製造業や原子力業を営む大手重工メーカー等の銘柄については事前届出が免除されない。手間がかかることや審査で投資が認められない可能性があるため、SWF等は該当しそうな銘柄への投資をためらうだろう。

ただ、批判が強いといっても、大きなウエイトを占めるポートフォリオ投資のほとんどは事前届出が免除されるため、今回の改正の発表後、外国投資家が撤退し始めたという情報は今のところ聞かれない。しかし、改正が来年春に施行され、いわゆるアクティビスト・ファンドによって株式を1%以上取得するための事前届出が行われるときに注目すべきである。仮にこれが審査で承認されなければ、外国投資家は、今までのコーポレート・ガバナンス強化の流れは建前にすぎず、日本では非効率な経営が温存されると捉えるかもしれず、日本の株式市場への投資のウエイトを下げるかもしれない。

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※英訳版

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金融調査部
主任研究員 金本 悠希