機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化

経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題

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サマリー

◆2023年3月期から有価証券報告書の人的資本に関する情報開示が義務化された。具体的には、人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備方針及び当該方針に関する指標の内容等について、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄に「戦略」と「指標及び目標」として記載する必要がある。

◆上場企業が公表した2025年3月期の有価証券報告書に基づき、構造的トピックモデルを用いて人的資本に関する記載内容を分析したところ、従来と同様に「戦略」には「人材の育成」や「キャリア形成」が、「指標及び目標」には「人材の多様性」や「ジェンダー平等」が多く記載されていることが確認できた。「指標及び目標」は「戦略」に記載した方針に基づいて記述することとなっているが、重きがおかれているトピックは異なる状況にある。

◆金融庁は、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関して「企業の中長期的な持続可能性に関する事項について、経営方針・経営戦略等との整合性を意識して説明するもの」と位置付けている。今回、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」や「事業等のリスク」の記述内容も分析したところ、それぞれに記載されている人的資本に関する記述と、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の人的資本の記述で重きが置かれているトピックスに若干の差異が見られた。自社の経営戦略と人事戦略の紐づけ、その取り組み状況を把握するのに適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が求められる。

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