サマリー
◆ユーロ圏の2025年4-6月期の実質GDP成長率(速報値)は、前期比+0.1%(前期比年率+0.4%)となり、横ばいを見込んでいた市場予想(Bloomberg調査:前期比0.0%)をわずかに上回った。もっとも、成長率は高い伸びとなった前期(前期比+0.6%)から大きく低下しており、ユーロ圏経済の回復の足踏みを確認させる結果であった。
◆国別の内訳を見ると、ユーロ圏20ヵ国のうち成長率が公表された12ヵ国中、8ヵ国がプラス成長、3ヵ国がマイナス成長、1ヵ国が横ばいとなった。プラス成長の国では、スペインの成長率が前期比+0.7%と最も高く、スペインの好調さがユーロ圏全体の成長を下支えする構図が4-6月期も続いた格好である。また、フランスも同+0.3%と成長率が前期(同+0.1%)から拡大し、市場予想(同+0.1%)から上振れした。他方で、ドイツ(同▲0.1%)、イタリア(同▲0.1%)がマイナス成長だったことに加え、アイルランドが前期からの反動で同▲1.0%と大幅なマイナスとなったことがユーロ圏全体の成長率を抑制した。
◆ユーロ圏経済にとって最大のリスク要因であった米国の追加関税に関して、相互関税率を15%にすることで米国とEUは合意した。現状の10%から税率が引き上げられるが、引き上げ幅は想定よりも小幅に留まったことに加え、4月以降、27.5%の関税が課されている自動車・同部品については税率が引き下げられる。米国の関税引き上げによってユーロ圏の輸出が下振れするリスクは大幅に低下したと言える。また、合意によって先行きの不確実性が大きく低下したことは、企業や家計のマインドにも好影響を及ぼすと期待され、ユーロ圏の成長率は、2025年後半以降、再加速していく見通しである。
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