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「このコンサル本がすごい!」大賞

2017年05月10日

経営コンサルティング部 主席コンサルタント 林 正浩

とにかく「コンサル本」が多い。多すぎる。月並みな表現は避けたいのだが、“あふれている”。

スライド資料の作成ノウハウや作例集、財務モデリングの構築手法、フレームワークの活用方法はもちろんのこと、問題解決法から効率的な読書術、処世訓からターンアラウンドマネージャーを主役にした小説仕立ての再生劇まで、今やビジネス書の一大ジャンルを形成しているといっても過言ではないだろう。

うず高く積み上げられた「コンサル本」をめくりつつ、「このミステリーがすごい!」大賞ならぬ「このコンサル本がすごい!」大賞をお届けすることとしよう。但し、筆者個人のセレクトであることをお断りしておく。

「このコンサル本がすごい!」大賞
『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』(カレン・フェラン著 神崎朗子訳)

大和書房から2014年に刊行された同書の副題は「コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする」である。なんとも辛辣なタイトルだ。白地のシンプルな装丁で買わせる昨今の出版社の巧妙な戦略に乗るまいと思いつつも手に取ると、単なる業界事情の暴露やコンサル批判ではなく、むしろ自虐を超えた冷徹な分析や内省が目につく。詳細は割愛するが、主張は極めてシンプルである。いわく、「コンサルティングにおいて重要なことはメソッドやツールではなく、ダイアログ(対話)」いわく、「企業はコンサル任せにせず、自ら考え、自ら動くべき」
ごくシンプルな「話し合い」が重要であり、1枚のアナログなブラウンペーパー(※1)にこそカタルシス効果がある、すなわち「ふれあいとローテク」が大事、との彼女の主張には特に共鳴する。
コンサルを起用してプロジェクトを切り回す事業会社の経営企画部の方々に是非お読みいただきたい一冊である。

もう一つ。同書から学ぶべきは、いかなる場合も失敗にいたる道程はシンプルであり共通項があること、そして失敗は「恥だが役に立つ」ということである。一方、成功事例は千差万別であり、結局自社には何の役にも立たないものだ。ベストプラクティスは“奇跡の”ダイエット食品。この本ではそう表現されているがまさにその通りであろう。そうした意味では、現役コンサルタント(※2)による失敗の缶詰ともいえる同書は現場に効く良書といえる。

では聞くが、コンサルは起用するべきではないのか。読者はそう疑問に思うであろう。同書を肴に議論を深めれば多くの場合、起用するべきではない、との結論になる。まさに組織が「ぐちゃぐちゃ」になってしまう可能性を否定できないからだ。但し、一方でV字回復を遂げた会社や、マーケティング戦略に独自性が出てきた会社、最近元気になった会社の中には、上場非上場問わずコンサルファームを起用しているケースが少なくない。筆者も「あそこの会社に、あのファームのあのチームがついていた」ことをずっと後で知り、妙に納得、感心することが増えている。

いずれにせよ、「ふれあいとローテク」を信じブラウンペーパーを前に意見交換をするところからはじめてみてはいかがだろうか。

(※1)同書では、業務プロセス改革を例にとり、現行プロセスを大型のわら半紙(ブラウンペーパー)に手書きで描き、そのプロセスに携わる全関係者を集め、気づきを付箋に書いて貼りつけ、議論を深めていく過程が簡単に紹介されている
(※2)著者であるカレン・フェラン(Karen Phelan)はデロイト・ハスキンズ&セルズ(現デロイト・トウシュ・トーマツ)、ジェミニ・コンサルティング等の大手コンサルファームを経て、製薬大手や日用品大手でマネージャーに転じている。そして現在ではオペレーティング・プリンシパルズ社の共同設立者となり、人材マネジメント分野をはじめとする幅広い領域で経営コンサルタントとして活動している

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林 正浩

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