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単純ではない円安デメリット

2014年10月07日

経済調査部 シニアエコノミスト 橋本 政彦

安倍政権の成立以降、為替レートは円安傾向で推移し、日本経済を押し上げる大きな要因となってきた。しかし、8月末以降、急速に円安が進んだことで円安のメリットだけでなくデメリットに対する注目度が高まっている。

円安が進むと輸出の増加を通じて企業収益を押し上げることに加え、円建て換算した海外現地法人の収益を膨らませる。他方で、輸入に係るコストも増加し、企業収益を押し下げる要因となる。しかし、企業や産業によって輸出入の割合は異なるため、円安による影響も一様ではない。一般的には輸出による恩恵は圧倒的に製造業にとって大きく、非製造業にとっては小さい。また、海外現地法人という観点から見ても海外進出が進んでいる製造業に与える影響が大きい。一方、コスト面では、日本の輸入の大宗を占める原燃料の投入量が多く、輸入価格上昇の影響を強く受ける非製造業でダメージが大きくなる。

ただし、こうした輸出入の変化だけで単純に円安の影響を判断するのは正しくない。製造業が受ける円安メリットが非製造業に波及する効果についても併せて考える必要があるだろう。例えば電力料金など、非製造業のコスト上昇を製造業向けの販売価格に上乗せすることができれば、非製造業の収益に与えるマイナスの効果は小さくなる。こうした波及を含めても円安が全ての業種にとってプラスになるとは考えづらいが、単純なコスト構造のみで円安の悪影響は測れない。

同様の議論は、家計部門と企業部門の間でも成立する。円安が進むと、輸入価格の上昇が機械的に販売価格に転嫁されるエネルギーを中心に、消費者物価が上昇するため、家計負担は増加する。しかし一方で、円安によって企業収益が増加するのであれば、その一部は賃金として家計にも還元され、物価上昇による負担の増加を和らげる効果を持つはずである。

問題は、円安による価格上昇は短期間で起こるのに対し、部門間の波及には時間を要するという点である。円安が急激に進む局面では、短期的には負担増が大きい非製造業や家計部門のデメリットが大きくなる。また、円安が進む中でも、従来ほどには輸出数量が伸びていない点にも注意が必要である。企業収益という観点からすれば必ずしも輸出数量が増加する必要はなく、価格上昇でも収益は押し上げられる。しかし、波及効果を考える上では数量も増加する方が望ましい。経済全体として見れば、円安は日本経済にとって中長期的にはメリットの方が大きいと考えられるが、輸出数量が伸びづらくなったことで、過去に比べて円安による効果が小さくなっている可能性がある。

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