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依然として警戒必要なアジア市場

2008年10月27日

由井濱 宏一

米国金融危機が深化するなかで、アジア株式式市場も日々の新たな情報に振り回され、変動性がますます高まっている状況である。ここ2カ月程度の株価動向は過去に例を見ないほどの短期間での崩落状況になっており、03年から継続してきた上昇基調は完全に崩壊してしまった。MSCIベースのアジア株式インデックス(日本株を除く)でみると、9月以降は03年からの下値抵抗線トレンドを大きく下回り、底値の目処が立たなくなっている。欧米の金融市場での異常事態といった特殊要因が大きく影響しているとはいえ、一方で、03年以降の中国の高成長に対する期待度も大きく低下している可能性がある。すなわち、グローバル金融市場の混乱がグローバル景気を冷やし、その悪影響が中国及び他のアジア周辺国に波及する可能性を市場は織り込み始めたといえよう。これほどの株価下落ピッチが現実に発生していることを考えると、既に欧米のリセッション入り、アジア経済の大幅減速を予見しているともいえる。

グリーンスパン前米連銀議長が指摘するように「100年に1回あるかないかの金融危機」という危機的状況の中では、株価バリュエーションもほとんど効いていない。アジア主要市場のイールドスプレッド(予想益回り-長期債利回り)をみると、いずれの市場も9月以降急上昇となっており、同スプレッドは異常値を示す水準にある。とりわけ、香港(ハンセン指数)やオーストラリア市場は同スプレッドが平均+2標準偏差をも上回る異常事態となっており、投資家の悲観度は極限に達している状況である。今後、年末年始にかけて自律反発する局面は訪れようが、変動性を高めながら下値模索の展開が継続する可能性が高いだろう。

背景にはいくつか理由がある。まず、米国不動産市場に反転の兆しが見えない中で、サブプライムローン関連証券化商品やCDSなど世界の金融市場にばら撒かれた証券化商品からの損失、リスク拡散度が極めて不透明といった点がある。日本の不良債権問題では、国内の金融機関のバランスシートからある程度は損失の広がり状況が推定できたわけだが、今回のケースでは誰が、どの程度のリスク商品を保有しているのか極めて不透明で、地雷がいつ爆発するかも分からない事態に陥っている。その象徴例がリーマン・ブラザーズの破綻であり、金融市場が疑心悪鬼に陥るのも無理はない。根本的には米国不動産市場に底打ち感が出てくることが絶対的に必要となる。そしてそれは米国の不動産価格指数(S&Pケースシラー住宅価格先物指数など)などから判断すると09年後半~10年前半あたりとみる向きが多い。

こうした状況下で、欧米株式市場も短期的には反転上昇に向かう公算は極めて低く、外国人投資家は内向き姿勢に徹することになりリスク許容度は低下したままとなるだろう。アジア景気がグローバル景気の悪化を受け始めることで、アジア通貨も総じて弱含みで推移しそうなことを考慮すると、アジア地域への資金流入は極めて限定的なものにならざるを得ない。

リーマン・ブラザーズの破綻を分水嶺にグローバル景気に対する見方や市場の先行きに対する下方修正が起こり、今後も厳しい展開が続くと予想されるなかで、投資戦略としては現下の金融危機に関連するセクターや外需関連セクターへの投資の積み増しは避けたいところである。先述したようにアジアの金融機関の傷口は欧米金融機関のそれに比べて小さいわけだが、疑心暗鬼が渦巻く市場環境の中では、積極的には買い進めにくくニュートラルスタンスが望ましいだろう。投資の重点は、極めてディフェンシブで相対的に堅調な民間消費関連である食品や医薬品、小売り(耐久消費財は除く)、原油価格の軟化によるメリットを受けやすい電力などの公益関連セクター、通信などに置くべきだろう。原油価格の下落という観点では空海運にもそれなりのメリットはありそうだが、需要サイドの落ち込みとのバランスに留意する必要があろう。

<MSCI Asia Pacific ex Japanの長期トレンド>

MSCI Asia Pacific ex Japanの長期トレンド

(出所)Bloomberg、DIR

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