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医薬品業界の動向 ~一層求められる効率化と国際化の両立~

2006年11月15日

大城 千鶴

シフトする医薬品業界における臨床開発のボトルネック

医薬品業界における臨床開発の特徴は、高額の投資と長い開発期間、そして決して高くない成功確率にある。このため、業界と行政当局が相まって、臨床開発の効率化に注力している(※1)

これまでは、米国では1年程度である新薬の申請(※2)から承認までの期間(中央値)が、日本では2年近くもかかっていた。これは、審査の長期化が開発期間を延長させ、製薬企業の成長力をそぐ結果になっているという批判を生んだ。その対応として、当局は承認審査業務を見直し、新たに医薬品医療機器総合機構を設立した(※3)。また、治験相談の充実、国際的な調和など、審査の効率化・迅速化のために継続的な取り組みが推進され、制度面の課題は改善されつつある。当局による課題の対応が推進されると、今度は審査を受ける企業側に改善の重点が移ってきた。

企業において求められる効率化と国際化の追求

医薬品の承認申請資料は国際的に共通の様式となり(※4)、承認申請の際に海外データを用いることも増えてきている。各国における医薬品開発を効率化するために、今後はさらにグローバルにデータを共有することが進んでいくことだろう。そして、この流れの中では、臨床開発の戦略とそれを支える組織が、各企業の競争力を左右してくる。

また、国際化はもろ刃の剣の性格を持つ。開発効率を上げるための国際化だが、取り組み方次第では国際化により企業内のプロセスが複雑化し、時間を要する結果となってしまう。これでは本末転倒である。これを回避するために、国際部門の中で開発の基本的な意思決定ルールを共有し権限委譲を図る、あるいは、ラインの階層を最小限にとどめ意思決定責任者と実務者の距離を縮めるなど、国際化に適合した企業内の組織とプロセスが正しく構築されなければならない。

だが、国際化の追求が効率化を妨げる場合もあり得る。この際は、別の処方を用意する必要がある。欧米のバイオベンチャーでは、事前に定めたマイルストーン(事業目標)までは開発を行うが、マイルストーン達成後は他社へ導出するというビジネスモデルが一般化している。その連携パートナーも、自国のみならず世界中に及んでいる。日本の医薬品企業も、連携によって国際開発の潮流に乗るという選択肢にもっと注目すべきである。

いずれにしても、開発の効率化と国際化が日本の医薬品企業の成長のカギを握ろう。

(※1)特に薬事制度面では、先端的な海外医薬品が日本で使えないという問題に議論が及び格差是正のための施策が講じられている。
(※2) 承認申請に当たっては、非臨床および臨床試験の結果を踏まえ、医薬品の品質、有効性、安全性を立証するための根拠を示す必要がある。
(※3)平成16年4月1日、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(旧医薬品機構)が廃止され、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が設立された。
(※4)平成12年11月、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)にて、CTD(Common Technical Document)ガイドラインとして合意がなされた。

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