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コアビジネス集中が評価される欧州企業のM&A

2006年03月28日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

欧州市場では企業のM&Aが主要な株価上昇材料となっている。特に今年に入って大型M&A案件の発表が増えてから、その傾向が顕著である。大型案件の代表は鉄鋼1位のミタル・スチール(オランダ)による2位のアルセロール(ルクセンブルグ)の買収提案。また、ドイツの電力会社のエーオンはスペインのエンデサに買収提案。買収を通じて欧州最大規模の電力会社となることを目指している。ほかにも銀行、保険、通信サービス、化学、医薬品とさまざまな業種がM&Aのニュースで賑わっている。

なぜ今M&Aが増加し、また注目されているのであろうか。M&Aが増加している理由は二つの側面から説明できる。一つは欧州企業が2000年に崩壊したネットバブル後の不況期から立ち直り、業績を改善させてきたことで、M&Aにも活用できる余裕資金ができたこと。2005年半ば以降、企業景況感の改善傾向が顕著であることも、より積極的な事業展開への追い風になっていると考えられる。もう一つは欧州企業が新たな成長推進力を求めていること。ネットバブル崩壊後、欧州企業はまずリストラを進めて業績改善を果たしたが、そのリストラの一巡で次の成長の推進力を探している。その際、本拠地である欧州経済の成長力が低いため、より高い成長を実現させるためには市場シェアの拡大、あるいは新市場の開拓が必要となり、その目的達成のためにM&Aが選択されているのである。

ところで、現在進行中のM&Aの特徴は、コアビジネスへの集中が重視されていることである。大型買収案件が目立つが、実は一方でコア事業ではないと判断された事業部門に関しては売却が進められている。収益力強化が重要視されている理由は、世界規模での競争激化に加え、株主利益の重視という経営方針が浸透してきているためと考えられる。欧州の上場企業の株主構成はここ10-15年で国内外の機関投資家の比重が高まり、政府や主要取引企業・銀行などによる持合いが縮小する傾向にある。欧州企業がコア事業への集中を図る過程でM&Aを活用し、それによって業界再編が進み、より競争力の高い企業の誕生が期待されることが、株式市場において評価されているのである。

なお、アルセロールとエンデサへの買収提案に対しては、ルクセンブルグやフランス政府が自国の従業員保護を理由に「外国企業」による買収を阻止しようと画策している。確かにM&Aの目的の一つである経営効率の向上にはリストラが付き物であるが、政府の権限を利用して買収を阻止しても、いずれは競争力向上のためになんらかの手立てを講じる必要が出てくると予想される。欧州委員会も政府による介入に警告を発しており、長い目でみれば政府の影響力は低下しよう。

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山崎 加津子

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