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企業と投資家を結ぶ中期経営計画

2005年09月14日

経営コンサルティング部 主任コンサルタント 神谷 孝

7月のワールドに続き、8月にはポッカコーポレーションもMBOによる株式の非公開化を決定した。自発的な非公開化という選択が、日本においても一般化しそうな感がある。

ところで、両社のプレスリリースを見ると、ある共通した言葉に気付く。 経営戦略や施策を短期的な業績の変動に左右されることなく迅速に実行する」(ワールド)。 こうした施策を、短期的な業績の波にとらわれず、迅速に遂行する体制を整備するとともに」(ポッカ)。

また、社長の会見においても、MBOに踏み切った理由として、短期ではなく中長期的な視点で経営を行いたいと共通に述べている。「短期ではなく中長期」、「迅速な実行」。この2つがキーワードのようだ。

MBOの問題点として、財務体質の悪化や経営陣に対する外部チェック機能の低下を懸念する声がある。財務体質の悪化はその通りだが、外部チェックに関してはいささか誤解があろう。MBOにともなう多額の買収資金は、大手の金融機関から提供される。これらはTOB成立後には対象企業の融資となるが、この融資がある間、大手の金融機関は厳しい監視の目をそそぐことになる。仮に、経営状況が悪化した場合は、経営陣の交替を要求する仕組みというのもあり得る。外部チェック機能は、株式公開時よりもむしろ厳しいかもしれない。

しかし、この金融機関によるチェックと株式市場による外部チェックとでは、ひとつ大きな違いがある。それは、MBOに協力した金融機関は、対象企業の中期的な目標、戦略、施策を熟知しており、それを理解し賛同しているという点だ(だからこそ大きな資金を提供している)。一方、株式市場における投資家は、そこの理解が乏しく目先の材料で投資を判断する傾向がある。今回、両者は、それが負に影響した場合の、株主の圧力、そして買収の脅威を懸念せずに、ファンドや金融機関と合意した経営施策を「中期的に」、「迅速に」実行することが企業価値の最大化に資すると考えたのだろう。

昨年以来、こうしたMBOのみならず、外資を含めた投資ファンドの日本市場における活躍が急増している。すなわち、非公開化のみならず公開時においても、これら企業防衛という観点から、経営陣は、常に株式価値最大化にまい進している姿勢を見せることが重要となってきた。その姿勢を見せるためには、企業の中期的な経営目標、戦略、施策が重要な要素となる。

中期経営計画の策定と実行。それは、経営陣が株式価値を高める経営をしているという投資家へのアピールであり、これからの企業と投資家を結ぶ重要なツールとなる。

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神谷 孝

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