スペインの総選挙で財政・政治リスクは高まるか
2026年10月23日
スペインのサンチェス首相は2026年10月5日、上下両院の解散と、11月29日の総選挙実施を発表した。前回、2023年の総選挙以降、サンチェス首相率いる中道左派・PSOE(社会労働党)と左派・Sumarによる連立政権は、下院の過半数に満たない少数与党で政策運営に苦労してきた。スペインで大きな社会問題となっている住宅不足・価格高騰への対応として政権が提案した政令が、中道右派・PP(国民党)、極右・Vox、Junts(カタルーニャのための連合)などの反対によって否決されたことを受け、住宅問題への関心の高まりを追い風とすべく、サンチェス首相は総選挙の前倒しに踏み切った。
近年の欧州の選挙では、極右政党の動向が注目されるのがもはや恒例となっているが、今回のスペイン総選挙でも、やはり極右政党の動向が注目点となる。
政党支持率ではPSOEと並ぶ二大政党の1つであるPPがトップという状況が2022年半ばから続いており、今回の総選挙でも前回の総選挙と同様にPPが第1党となる可能性が高い。ただし、PP単独で議会の過半数獲得は難しいとみられ、政権樹立にはVoxとの協力が想定される。
前回の総選挙後は、PPとVoxの2党で議会の過半数に満たず、他党の協力も得られなかったため、PPは政権を樹立できなかった。もっとも、現在のPPの支持率は30%強と2023年の選挙直前とほとんど変わっていないが、Voxの支持率が20%弱まで上昇し、2党で下院議会の過半数に達する可能性がある。PSOE中心の左派からPP中心の右派へと政権交代が起こるか否かは、Voxの獲得議席と、その後の連立交渉がカギとなる。
選挙を経て極右勢力の拡大が見込まれるという点は、2027年4~5月に大統領選挙が予定されるフランスとも共通する。フランスでは、政治の不安定化や財政悪化への懸念などから足元で長期金利が上昇しており、その意味ではスペインでも選挙後は財政運営が注目されると見込まれる。
だが、Voxが議席数を増やし、その影響力を強めたとしても、財政悪化のリスクはフランスほどには大きくないとみられる。
最大の違いは、Voxが小さな政府を志向していることだ。反エリート、反移民という主張はVoxとフランスの極右・国民連合と共通しているが、国民連合が労働者層の保護を重視するのに対し、Voxはむしろ減税と大幅な歳出削減を提案している。
また、仮にPPとVoxの2党で下院議会の過半数を獲得すれば、2023年からの少数与党政権よりも政策運営はむしろスムーズになると見込まれる。2023年の総選挙以降、スペインでは政治的分断を背景に新年度予算が成立せず、延長予算によって財政が運営されてきたが、こうした状況は是正される可能性がある。
一方、極右の政権入りにリスクがないわけではない。最大のリスクは移民政策の転換だろう。右派でも中道寄りのPPは移民政策については比較的寛容だが、Voxは移民流入の抑制を政策の最優先課題に位置付けている。しかし、スペインでは近年、移民の流入による人口増加が、経済の好調さ、ひいては財政改善の大きな要因となってきた。移民政策の厳格化は、スペイン経済の成長力を低下させ、財政にも悪影響を及ぼしかねない点には注意が必要だろう。
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- 執筆者紹介
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ロンドンリサーチセンター
シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

