実務手引き「社債発行のガイドブック」— 社債発行への入り口

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2026年07月10日

企業を取り巻く事業環境の変化を背景に、資金調達手段を見直し、多様化していく必要性があらためて意識されている。これまで、企業の資金調達は銀行借入が中心で、社債は十分に活用されてこなかった。社債とは、企業が投資家から資金を集めるために発行する債券である。満期に元本を一括で償還し、利率を固定するのが一般的で、銀行借入より返済期間を長くとれる。このため、中長期の資金計画を立てやすいとされる。金利が上昇するなか、資金の調達先を広げて財務を安定させる必要性は高まっているが、社債の発行手順は十分に知られておらず、多くの企業にとって身近な選択肢となっていない。

こうした状況を踏まえ、経済産業省は6月10日、「社債発行のガイドブック」と「社債活用好事例集」を公表した(※1)。一般には大きく報じられていないが、社債発行を検討する企業向けに、発行手続をまとめた実務の手引きとなる。ガイドブックは、社債活用の意義や発行手続の全体像に加え、公募債・私募債それぞれの発行実務、ハイブリッド債やESG債といったさまざまな社債の設計、コベナンツ(発行体に一定の義務を課す特約条項)や社債管理補助者による投資家保護の仕組みまでを幅広く扱う。社債発行に関与する証券会社や銀行が、こうした資料を用いて説明や提案を重ねていくことも期待される。

発行の準備でまず必要になるのが、信用力を示す格付の取得である。投資の対象から外されることもあるBBB格だが、上場企業全体を信用力の推計で並べれば上位4割強に入る企業であり、十分な信用力を備えていると指摘されている。格付の印象にとらわれず、BBB格が堅実な企業を示すことを、企業も投資家も正しく理解することが出発点となる。

手続きの多くは、証券会社などから支援を受けられる。初めての発行には数カ月を要するが、その後は準備期間が短縮され、負担も軽減される。社債投資家向けの情報発信などを通じて、市場との対話を重ねた企業には、投資家の間で認知や理解が広がり、需要も集まりやすくなる。平時から市場との接点を持っておく意義は大きい。

社債は、資金を集めるだけの手段ではない。信用力が格付やスプレッド(国債金利との差)に反映されることは、自社の財務をこれまで以上に厳しく管理するきっかけにもなる。社債市場の裾野を広げることは長年の課題だが、その第一歩は、企業一社一社が銀行借入と並ぶ選択肢として社債を知ることから始まる。ガイドブックはその入り口となるだろう。

(※1)企業金融の高度化に向けた社債市場の在り方に関する研究会「社債発行のガイドブック」及び「社債活用好事例集」(経済産業省、2026年6月10日公表、最終更新日2026年6月15日)

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執筆者紹介

金融調査部

金融調査部長 鳥毛 拓馬