若年層対策とDXがもたらす協会けんぽの保健事業の進化

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2026年07月06日

2026年5月29日、「健康保険法等の一部を改正する法律」が成立した。主な内容には、一部保険外療養の創設、後期高齢者医療における金融所得の保険料等への勘案、妊娠・出産支援の強化、高額療養費制度における考慮事項の明確化などが挙げられる(※1)。これらに加え、協会けんぽ(全国健康保険協会)の保健事業に関する責務が明確化された点が注目される。協会けんぽに対し、加入者の年齢・性別・健康状態等の特性に応じた、きめ細かい予防・健康づくりを適切かつ有効に実施することが、法律上規定されたのである。

もっとも、協会けんぽはすでに、加入者の予防・健康づくりの強化に向けて動き出している。特に、若年層に対する健康増進・疾病予防を新たな重点事項に掲げ(※2)、2026年度からは被保険者向けに、20歳・25歳・30歳を対象とする生活習慣病予防健診の新設と、35歳以上を対象とする人間ドックの費用補助(最高25,000円)が開始された(※3)。あわせて、40歳から5歳刻みの節目健診や、40歳以上の偶数年齢の女性を対象とする骨粗鬆症検診も新たに導入され、生活習慣病予防健診の充実が図られた。2027年度からは、これらの見直しを被扶養者健診にも適用する計画である。

さらに、保健事業の高度化を図るため、国の医療DXのインフラを活用した「けんぽDX」も推進されている。2026年1月には、約4,000万人の加入者を対象とする「けんぽアプリ」がリリースされた(※4)。同アプリは、電子申請やコンテンツ配信から開始され、将来的には健診案内や健診予約など、個人情報を活用した付加価値サービスの提供も見込まれている。他の保険者等の外部機関との連携を図り、誰でも使えるアプリへと発展させることも想定されている。幅広い層を取り込む巨大プラットフォームが実現すれば、社会全体の健康増進に大きく貢献するだろう。

他方、今回の改正では、2026年度から2028年度までの3年間の時限措置として、協会けんぽに対する国庫補助の特例減額における控除額の引き上げが決定された。準備金残高の積み上がりが要因ではあるものの、国からの財政支援が縮小する協会けんぽにとっては、より効果的・効率的な保健事業の実施が一段と重要になる。カギを握るのは、加入者の健診情報などビッグデータの活用だろう。加入者の属性や健康状態に応じた精緻な分析に基づき、保健事業を最適化することで、中長期的な医療費の適正化も期待される。こうした取り組みを推進することは、国庫補助に依存しない持続的な財政運営の確立にもつながるとみられる。協会けんぽの保健事業のさらなる進化に注目したい。

(※1)厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律案について」第211回社会保障審議会医療保険部会 資料1(2026年3月19日)
(※2)全国健康保険協会「保健事業の一層の推進について」第131回全国健康保険協会運営委員会 資料3(2024年9月12日)
(※3)全国健康保険協会 令和8年度用各種パンフレット「被保険者(ご本人)の方向け」
(※4)全国健康保険協会ウェブサイト「けんぽアプリについて」(最終閲覧日:2026年6月30日)

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執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 石橋 未来