「形式的・機械的な議決権行使」批判について考える

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2026年06月26日

  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史

近年、機関投資家、特にパッシブ投資家の議決権行使に対する風当たりが強まっている。先日、経済産業省が公表した「成長投資ガイダンス(案)」でも、そのタイトルとは直ちには結びつかない議決権行使について、「第4章 投資家に期待される対応」に「形式的・機械的な議決権行使の弊害」という節が設けられ、懸念が示されている。
議決権行使基準は、投資家が期待する平均的な姿や市場慣行から形作られるものであり、基準を設けること自体がエンゲージメントの役割も果たしている。「形式的」で「機械的」な議決権行使は望ましくないことは言うまでもないが、基準を設けること自体を形式的と言っているのであれば、一体どうすればよいのかという担当者の嘆きが聞こえてくるようである。運用報酬の価格競争が進む中、受託者責任を全うするだけでなく、資本市場の底上げを目指し、日々苦労されている議決権行使担当者の方々のことを思うと、個人的には大変気の毒で仕方がない。

パッシブ運用が広がりを見せる中、海外の研究者の間では、パッシブ投資家の議決権行使に関して、大変興味深い研究が行われている。「Mirror Voting(※1)(ミラー・ボーティング)」という最新の論文では、米国の2005-2025年の株主総会の約64万件の議決権行使結果のデータを使って、パッシブファンドの議決権行使改革案を考察している。具体的には、過去の議決権行使結果からパッシブファンドの行使分を抜き出し、①議決権不行使、②会社提案に基づく行使、③議決権行使助言会社の助言に基づく行使、④ミラー・ボーティング(インデックス投資家以外の賛否割合で行使)、という4つの方法に置き換えた場合の議決権行使結果に与える影響を検証している。
その論文では、ミラー・ボーティングが、過去の議決権行使結果にほとんど影響を与えず、安定的でコストも低いと主張しているが、実際に導入した場合には、果たしてそうなるだろうか。この議決権行使行動自体が、アクティビストなどの投資行動を変える可能性もあるだろう。企業側は、伝統的なアクティブファンド(ジャッジメンタル運用)は企業への理解が深いと考えるかもしれないが、アクティブファンドの投資先の数は絞られてきているとも言われている。上記②以外のケースでは、アクティブファンドの投資先以外は、アクティビストのターゲットになりやすくなるかもしれない。

投資家が期待する平均的な姿や市場慣行から形作られる議決権行使基準やパッシブファンドの議決権行使を糾弾することは容易いが、その解決は簡単ではない。アカデミアで論じられていることが仮に実現したとしても、必ずしも経営の安定化につながるわけでもないだろう。結局のところ、地道に対話を続けることが、最善かつ現実的な解だと思われ、双方の立場や環境を理解することが、建設的な対話の第一歩となる。

(※1)Hu, Edwin, Bishop, Robert E., and Partnoy, Frank (2026), “Mirror Voting,” European Corporate Governance Institute – Law Working Paper, No. 940/2026.

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塩村 賢史
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調査本部

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