中国:泥沼化する不動産不況、軍幹部粛清が追い打ち?

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2026年06月10日

中国の不動産不況が泥沼化している。2026年1月~4月の不動産開発投資は前年同期比13.7%減(以下、変化率は前年比、前年同期比)となった。中国国家統計局は2025年の17.2%減からマイナス幅が縮小したと前向きに捉えるが、2022年~2025年の4年間で年平均13.5%減となった挙句の2桁減であり、実態は極めて厳しい。

政府が打てる手としては、供給(新規建設)を抑制し、需要(住宅購入)をテコ入れすることになるが、需要は低迷したままだ。これには、住宅購入者がどのデベロッパーの物件なら安心して買うことができるのか、分からなくなってしまっていることも大きく影響している。中国では建設中に物件を購入する「予約販売」が大勢を占める。住宅ローンの返済は続く一方で、デベロッパーの資金繰りが悪化し、工事が中断してそのまま放置されるようなことになれば一大事だ。

上記に関連して、代表的な上場デベロッパー55社のうち、実に7割に相当する38社が債務不履行(デフォルト)に陥ったか、償還(返済)期限の延長を行っている。特に注目すべきは、保利集団有限会社の不動産部門である保利発展ホールディングス(以下、保利発展)に関連する信託商品が、4月末に2度目の償還延期を発表したことだ。この信託商品は2023年4月19日に、保利集団傘下の保利(横琴)キャピタルが全額出資する広州嘉佑企業管理有限会社が組成したもので、保利発展の12のプロジェクトに投資していた。当初は2025年4月19日に償還予定であったが、1年間の延期が発表され、それでも償還できずにさらに半年、期限が延長された。

保利集団の前身は、1984年に中央軍事委員会の承認を得て、人民解放軍総参謀部装備部と中国国際信託投資会社(中信集団の前身)が共同設立した保利科技有限会社である。1998年7月以降は、中国共産党・政府の「軍による商業活動禁止」規定に基づき、保利集団は軍から分離され、中国国有資産監督管理委員会管轄の中央企業に転換した経緯がある。こうした歴史的背景から保利発展には国家が全面的なバックアップを行い、資金繰り難・経営難とは無縁の存在とみなされていたのである。

こうした中で、保利発展に関連する信託商品が、2度目の償還延期を余儀なくされたのである。これは2つの意味で衝撃的だ。ひとつは、2025年まで3年連続で不動産販売額1位を獲得した最大手のデベロッパーでさえ資金繰りに窮するほど、今回の不動産不況は深刻であることだ。もうひとつは人民解放軍との歴史的な背景がある会社でも、もはや聖域ではなくなったことである。恐らくこれには習近平総書記と人民解放軍(幹部)との関係の変化も少なからず影響していよう。周知の通り、2022年10月に7名体制で発足した党中央軍事委員会は粛清に次ぐ粛清で、現在は習近平主席と張昇民・副主席の2名体制となっている。同委員会は最初に李尚福国防大臣(当時)が失脚した2023年10月から1人の補充もままならない異常事態が続いているのだ。

冒頭に述べたように、中国の不動産不況は泥沼化している。これに政治的な問題が拍車をかけていると考えるのは深読みしすぎだろうか?

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齋藤 尚登
執筆者紹介

調査本部

主席研究員 齋藤 尚登