改革「道半ば」論に潜む危険性
2026年05月20日
コーポレートガバナンス改革であれ、金融事業者にかかる顧客本位の業務運営の推進であれ、政府が進める様々な施策に関しては、改革は「道半ば」という説明がしばしば行われる。考えてみると、「道半ば」という言葉はたいへん便利な言葉だ。「道半ば」ということは、「半ば」は道を進んでいるのだから、それまでの施策には一定の効果があったことになる。同時に、「半ば」ということで、施策がまだ十分には浸透していないことの表明にもなる。そして、そのことから、これまでの施策を継続、あるいは一段と強化していくとの結論を容易に導くことができる。
このように、「道半ば」論は、一つの施策を単発的なものとせず、継続的に実施していく上で極めて有効な論法といえる。しかし同時に、その使用に当たっては、いくつか注意しておくべき点があるように思われる。
まず、これまで施策を積み上げても成果が「半ば」にとどまったのだとすれば、これまでの施策の延長では、仮にそれを一段と強化したとしても、「半ば」以上の成果にはつながらず、当初目標とされた最終的なゴールには決して行きつかないのかもしれない。例えば、日本におけるコーポレートガバナンス改革の推進に、コーポレートガバナンス・コードの策定・改訂が仮にこれまで一定の効果をもたらしてきたのだとしても、そのコードのさらなる改訂が、これから先のコーポレートガバナンス改革に引き続き有効な手段になるとは限らない。そうだとすれば、真のゴール達成のためには、これまでの延長線上ではない、別角度からの施策の推進が必要になってくるのだろう。
次に、以上は目指すべき方向が絶えず不変であることを前提にした議論だが、実際には、その前提が揺らいでいるかもしれない。これまでの施策の積み上げで改革が「半ば」まで進んだのだとして、その間の施策の進捗や環境の変化などを勘案した時に、現時点でさらに進んでいくべき方向は、当初のそれと同じとは限らず、変容している可能性がある。例えば、コーポレートガバナンス・コードが2015年に策定された当初は、株主・投資家の立場が他のステークホルダーに比べて軽視されていたきらいがあった。このことから、コードには、他のステークホルダーとの協働ということについても言及があるものの、株主・投資家の立場の強化を意識した部分が少なくない。しかし、その後10年あまりが経過して、株主・投資家の立場も相当に強化されたのではないか。改革をこの先、どの方向に進めていくかについては、これまでの状況の変化などを踏まえて、時々に適切な判断が行われていくべきだろう。
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専務理事 池田 唯一

