竹の成長とAI
2026年06月12日
先日、水戸の偕楽園を訪れた。これまで水戸には幾度となく足を運んできたが、偕楽園は初めての訪問である。偕楽園は1842年(天保13年)、水戸藩9代藩主・徳川斉昭(なりあき)によって造園された庭園であり、現在では金沢の兼六園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の一つとして知られている。
この日は梅の季節ではなかったが、東門から入園し、園の約半分を占める梅林を右手に眺めながら、一部にツツジが残る見晴広場を経て、好文亭に足を運んだ。「好文」とは梅の異名であり、晋の武帝の故事「学問に親しめば梅が咲き、学問を廃すれば咲かなかった」に由来し、この場所は文人墨客や家臣、領内の人々を集めて詩歌や慰安会を催したことで知られる。好文亭は本体と奥御殿からなる木造建築で、1945年の水戸空襲や1969年の落雷による消失、さらに2011年の東日本大震災による被災を乗り越え、2012年に全面復旧している。
三階の楽寿楼からは偕楽園全体と千波湖を一望できる。梅の盛りにはさぞ壮観であろうと想像しながら景色を堪能した。その後、好文亭表門へ向かう途中で孟宗竹林を歩いた。竹は非常に成長が早く、この孟宗竹は一日で119cm(※1)伸びたという記録もあるようだ。このように竹が急速に育つのは、樹木に比べて細胞分裂が生じる『成長点』が多いためである。樹木では細胞分裂で伸びる箇所が先端の1ヵ所だけなのに対して、竹は全ての節ごとに分裂組織をもっており、その結果、成長点の数が樹木に比べて極めて多いためといわれている。
こうした竹の急速な成長は、近年のAI技術の進展を想起させる。一方、竹の寿命は、太いものほど長く、20年程度とされるのに対し、AIには明確な寿命があると聞いたことがない。もっともAIは膨大な電力を必要とする以上、電力供給がその存続条件であり、これを一種の制約、すなわち寿命と捉えることもできる。電力供給の問題は環境問題と不可分であり、AIとの持続的な共存の可能性については重要な論点である。
さらに、2040年前後に到来するといわれるシンギュラリティ(AIの進化の転換点。技術的な進歩によって、AIが人類の知能を超えるといわれている時点)に関しては、AIが自己存続を優先し、人間の倫理観を逸脱する可能性への懸念も拭えない。かつて映画の中でフィクションとして描かれた様々な世界観が、一つずつ現実味を帯びつつある今、その進展を適切に制御できるかは人間側の責任にほかならない。「竹林の七賢」に象徴されるような人間の智慧が、これからの時代にこそ求められているのかもしれない。
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