ハンガリーの政権交代は欧州の右傾化に歯止めをかけるか?

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2026年04月24日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

2026年4月12日に行われたハンガリーの議会選挙では、マジャル・ペーテル氏が率いる新興右派政党・ティサが定数199議席のうち、3分の2を上回る141議席を獲得する地滑り的な勝利を収めた。これまで政権を担ってきたオルバン・ヴィクトル氏が率いる極右政党・フィデスの獲得議席は52議席にとどまり、2010年以来、16年ぶりの政権交代が起きることとなった。

今回のハンガリーでの政権交代は、ハンガリーのみならずEU全体にとっても重要な意味を持つと考えられる。オルバン政権は、司法やマスコミへの介入を強めるなどして、国内で専制的な政治を行うとともに、対外的にはEUに対立的な姿勢を取ってきた。近年では、親ロシア的なオルバン政権による拒否権の発動が、ウクライナ支援やロシアに対する制裁に関するEUの意思決定の障害となっていた。

一方、新たに政権を担うティサは、親EU的な立場を明らかにしている。その主要な目的は、法の支配に対する懸念を理由に停止されているEUからの補助金を再開させ、停滞するハンガリー経済再興を図ることであり、必ずしもEU全体の発展を考えているわけではないとみられる。だが、理由はともあれ、ハンガリーが親EUへと転換することは、EU全体の連帯強化にとってプラスであることに間違いないだろう。

では、ハンガリーでの極右政権の崩壊は、欧州で進行する右傾化の変調の兆しと捉えるべき動きなのだろうか。

今回の選挙でのフィデス敗退の最大の要因は、政策の内容よりもむしろ、政治的な腐敗に対する国民の不満であったと考えられる。実際、選挙に勝利したティサは、EUとの関係性を中心に、外交面ではフィデスと目指す政策の方向性が大きく異なる一方、内政面では共通している部分が少なくない。特に注目すべきは、近年の欧州での右傾化の議論の中心にある移民政策である。ティサは、EUが定める移民ルールの一部に対しては譲歩する姿勢を見せつつも、基本的にはこれまでと同様に不法移民に対して厳格に対処する方針である。その一環として、オルバン政権下で不法移民の流入を防ぐためにセルビアとの国境に設置されたフェンスは維持するとしている。オルバン政権が崩壊したとはいえ、ハンガリーで右派的な政策に対する国民の支持が後退したわけではない。

ここ数年、欧州の選挙では、数多くの政権交代が実現しているが、その背景には物価高などによる国民の暮らし向きの悪化に十分に対応できていない既存政権への失望があるとみられる。ハンガリーでの政権交代も同様の文脈で理解することができ、オルバン政権の崩壊をもって、欧州の右傾化に歯止めがかかったと捉えるのは早計と思われる。他の欧州諸国では既存政権への不満の受け皿の一端を、ポピュリズム的な極右政党が担うという構造は今後も続く可能性があり、引き続き注目していく必要がある。

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橋本 政彦
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ロンドンリサーチセンター

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