消費税減税より「最初の一歩」を。米国のトランプ口座が示す物価高対策
2026年02月27日
2026年2月8日に投開票が行われた衆議院議員選挙では、多くの党が消費税減税を公約に掲げた。選挙後、高市政権は公約に沿って、今後2年間に限って食料品の消費税を減税する案を物価高対策の柱として検討している。累進的ではない消費税の減税は、低所得層の負担を軽くするため一見合理的だ。しかし、多くの経済学者は悪手だと指摘する。経済効果は小さく、税率を元に戻す際の負担感が大きいためだ。
一方、米国では2025年7月に経済対策パッケージ(One Big Beautiful Bill Act)が成立した。この経済対策には、残業代非課税やチップ非課税など、物価高の影響を受ける家計を下支えする措置が含まれており、これらは当面の負担を軽くする対症療法だ。これに対し、トランプ大統領は、物価高に耐えられる家計構造を作ることを目的とする「トランプ口座」の政策がより重要であると説明している。
トランプ口座は2025年から2028年に生まれる新生児に対し、米国政府が1,000米ドルを拠出し、S&P500などの株価指数に連動した運用を行う仕組みだ。トランプ大統領は一定の追加拠出をすれば18歳時点で少なくとも5万米ドルに達する可能性があると述べている。米国でもすべての国民が資産運用を行っているわけではなく、株式を保有する世帯の割合は6割弱にとどまる(※1)。足元のインフレで所得が目減りして苦しい家計も少なくない。とりわけ米国では年金や医療における自己責任の比重が大きく、インフレ局面では賃金だけでなく金融資産を持つかどうかが家計の生活防衛力を左右する。
もっとも、資産運用のハードルは低くない。第一に、元手となる余資が必要である。日々の生活に余裕がなければ、資産運用にお金を回すことは難しい。第二に、心理的なハードルも高い。一度も資産運用をしたことがない人は、資産運用が選択肢に入りにくい。トランプ口座は、この両方を解決する仕組みになっている。
日本のNISAは非課税で資産形成を後押ししてきた一方、投資の初期条件となる元本の確保や参入のきっかけづくりには、なお課題が残る。ここに更なる政策対応の余地がある。家計の資産選択は、マクロで見れば合理的に変化し始めており、デフレ期の預金偏重から、インフレ期に適した株式へと徐々にシフトしつつある。実際、家計金融資産に占める株式の比率は、この3年で10.3%から13.9%に拡大した(※2)。ただし、投資の初期条件が整わない層ほど取り残されやすい。だからこそ、政策の役割はこうした層に対し、「最初の一歩」を後押しすることにある。対症療法の意味が大きい期間限定の消費税減税だけでなく、物価高に耐えられる家計の基盤をどう作るかが重要だ。米国を参考に、資産形成のすそ野を広げる一手が日本にも求められている。
(※2)日本銀行の資金循環統計によると、家計金融資産に占める株式の比率は2022年9月末時点で10.3%、2025年9月末時点で13.9%。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
シニアエコノミスト 吉田 亮平
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