街中の交通量調査から考えたデータ収集への危機感
2025年06月27日
先日、家の最寄り駅の周辺を歩いていると、歩道に大勢の交通量調査のアルバイトの人たちがいるのを見つけた。交通量調査のアルバイトといえば、道路の端で椅子に座り、手元のカウンターで行き交う人や車を数える光景を見たことがある人も多いだろう。私が学生の頃は(拘束時間は長いものの)短期間で稼ぐことができる高収入なアルバイトで有名であり、旅行やスキーに行くために数日間の交通量調査のアルバイトでその資金をねん出するものもいた。
その一方で、現在でも交通量調査のアルバイトが存在していることに少し驚いた。なぜならば、人手不足という厳しい現状下で、携帯電話の位置情報などのデータを使った交通量調査が可能であり、昔のような人海戦術による交通量調査への需要は大きく減っていると思っていたからだ。
そもそも交通量調査は、国や地方自治体の道路の計画・建設や渋滞発生個所の把握等の基礎資料として使われるだけでなく、店舗をどこに出店するかといったマーケティング戦略でも必要なデータとして活用されてきた。さらに今後は、地域社会を維持するための最適な交通手段を模索したいという行政ニーズを満たすデータとして使われる可能性がある。2025年6月13日に政府より公表された『モビリティ・ロードマップ2025』(※1)で指摘されているように、公共交通サービスに対する潜在移動需要の存在を踏まえた「モビリティサービスの効率化」がモビリティサービスを巡る現状の課題とされている。
将来的にデジタル機器が社会の隅々まで浸透して通信でつながる環境が整えば、詳細かつリアルタイムな交通量を把握できるようになると考えられる。自動車のみならず他のモビリティでもSDV(Software Defined Vehicle)(※2)(※3)化が進み、道路上に多くのカメラやセンサーが設置されれば、交通手段の把握も容易になるだろう。今後さらに厳しさが予想される調査員の人手不足という課題の解決にも貢献できそうだ。
データを集めるという作業にはまだまだ泥臭い側面が多く残されている。しかし、日本のように急速な人口減少が進み、世界的にもプライバシーの観点から統計調査の実施が難しくなる中、デジタル化を急がないとデータ自体が集まらず、適切な意思決定にも支障をきたす恐れがあることに大きな危機感を持つべきだろう。
(※2)通常は自動車の文脈で語られるが、ソフトウェアを基軸として新たなモビリティを設計すること。インターネット接続によって様々な機能のアップデートや追加ができ、自動運転に向けた運転の総合管理などが可能になる。
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経済調査部
主任研究員 溝端 幹雄