ラジオ放送100年、復権の鍵はデジタルにあり?

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2025年01月08日

2025年は日本でラジオ放送が開始して100年目に当たる。1925年3月22日に仮放送が始まり、本放送が始まった同年7月12日に東京・愛宕山の東京放送局(現在のNHK)から発せられた電波を受信できた受信契約者数は5,455にすぎなかった。しかし、翌年の1926年にはそれが約39万まで急増したそうである(※1)。しばらくの間はラジオの放送局はNHKのみだったが、1951年になると民間ラジオ放送も始まり、その後、1953年のNHK・民間によるテレビ放送へとつながっていく。

ラジオはしばしばオールドメディアと見なされがちであるが、近年はデジタルの力を借りて、これまで面倒または困難であったことが容易にできるようになっている。例えば、radiko(※2)というサービスの登場によってインターネットにつながる環境があれば、スマートフォンなどのデジタル機器からほぼリアルタイムで聴取できるようになり(※3)、しかも過去1週間分の番組は無料で聞くことができる。有料会員になると、通常の聴取エリアを超えて全国各地のラジオ番組を聞くことや過去30日間の番組が聴取可能である。また、リスナーと呼ばれる聴取者はハガキやメールに加え、SNSを通じてコメントすることが可能となり、SNSではスタジオの様子などの写真や動画がリアルタイムに配信されるなど、よりライブ感・一体感のあるメディアへと変化している。

しかしながら、ラジオを取り巻く現状はかなり厳しい。特にAM放送には災害対策や採算性において課題がある。AM放送は山間部でも比較的聴取しやすく、広範囲に電波を届けられるというメリットがある一方、建物内では聞こえにくいというデメリットがある。この問題への対策として2014年よりAM放送と同内容をFM放送でも聞けるFM補完放送(ワイドFM)が開始されている。さらに、AM放送は送信設備の維持コストが大きい反面、広告収入が減少していることもあり、現在、実証実験を通じて、維持コストの安いFM放送への転換が模索されている。ただし、このFM放送は送信エリアが狭いという別の課題があるため、地域によっては必ずしもAM放送の代替とはならない場合もある。

こうした状況下、インターネットでラジオが聴取できるradikoは有効な代替手段と言えそうだ。ただし、radikoの大きな課題は完全なリアルタイムでは聴取できないことである。災害時に情報取得でタイムラグがあることは、生命の危険に直結しかねない。近年はこのタイムラグを減らす取組が行われてはいるが、まだ課題も多い。そのため、radikoのタイムラグをなくすことは喫緊の課題だろう。

個人的な感想では、ラジオはオールドメディアの中でもかなり自由度の高いメディアと感じられ、むしろ今の時代に合っているように思われる。デジタルと融合しながら新しいラジオ像が描けるのか、今後のラジオの動きに注目したい。

(※2)radikoは株式会社radikoの登録商標。
(※3)実際には1分程度のタイムラグがある。

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄