バーチャルサービスが拓くより良い未来
2022年02月28日
最近、外出する機会が激減し、体重が増えてしまった。もともと運動量は多くはなかったが、通勤や買い物などのなけなしの運動がなくなり、代謝が下がってしまったらしい。筋金入りの運動嫌いであるため、家での筋力トレーニングなど、新たに運動習慣を作るのはハードルが高い。そこで、まずは食事の内容を見直そうと、食事管理用のアプリケーションを入手した。600万人以上が利用する人気アプリケーションらしく、期待が高まる。
使い方は簡単で、食事の写真を撮影すれば、画像がAIによって自動的に解析され、摂取栄養素を記録することができる。1日の終わりに、その日の食事内容の評価や、不足している栄養素、次の日はどのような食事を心がけるべきかをアドバイスしてくれる。栄養素ごとのグラフを見ると、想像以上に摂取栄養素に偏りがあって驚かされた。
よくできているな、と感じたのは、管理栄養士風のキャラクターが様々な表情と共にアドバイスを述べる点だ。食事内容が良いと満面の笑みで褒めてもらえたり、暴飲暴食をすると号泣されたりする。うっかり入力を怠ってしまった後には、ただ入力するだけでも褒めてもらえ、入力するよう励まされる。ただのキャラクターだと頭では理解しているが、実際に他人が私のダイエットに伴走してくれているように感じられる。これまで食事の管理やダイエットをプロに依頼するためには、スポーツジムに入会をするなど、相応の対価を支払わねばならなかった。それが、技術の進化により、家にいながらにして、基本無料でサービスを享受できるようになったのだ。
バーチャルなサービスは教育にも応用可能ではないか。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、学校教育は、一箇所に生徒が集まって、その場で教育を受けなければならない、という枷が外れた。今はまだ所属している学校の授業をオンラインで受講する形式が主だとは思うが、いずれは居住地によらず、自分の学力に応じて、好きな授業を受けられるように変化していくのではないだろうか。上述の食事管理アプリケーションと同様に、AIを活用した学習補助も考えられる。塾などの私教育も、アプリケーションなどを通じた安価なサービスがさらに増えていくだろう。これにより、居住地や世帯の収入による教育格差が縮まることが期待できるし、心身の不調で学校に通えないというケースでも教育の機会を失わずに済む。感染症による危機も、技術や社会の変化を爆発的に推し進める契機にできれば、収束後により良い未来が待っていると感じられる。
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- 執筆者紹介
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政策調査部
研究員 中村 文香
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