多様性を受容する社会は、きっと創造的で成長性の高いものになる
2021年01月27日
先日、筆者は十数年ぶりに旧友との交信が再開するうれしい出来事があった。旧友とともにした時間は筆者にとってとても楽しいものだったが、次第に音信が途絶えるようになっていった。他に関心が移っていったのか、あるいは嫌われてしまったのかなどとも思っていたが、十数年経った今、その理由を明かされて衝撃を受けた。
旧友は、自分がいわゆるセクシャルマイノリティにあたることを打ち明けてくれた。旧友の話では、あのころの交流はよい刺激になっていたものの、筆者との関係を周囲に恋愛関係のように見られることを次第にストレスに感じるようになり、当時としては、関係を続けていくのが難しかったのだという。
調査手法にもよるが、なんらかのセクシャルマイノリティにあたる人は人口の1割近く存在する。しかし、筆者の数百人の交友関係の中で、セクシャルマイノリティであることを打ち明けてくれた人は、(自らセクシャルマイノリティであると公表して活動している人を除けば)この旧友を含めてまだ3人だけである。
旧友はあのとき関係を閉ざすことになったのは筆者のせいではないと言ってくれた。しかし、それ以外のこれまでの人間関係ではどうだっただろう。思い起こすと筆者には反省すべきところがたくさんある。筆者は、10代のころはセクシュアリティが多様であることを十分に理解していなかった。これまでの会話の中では、セクシャルマイノリティ(のように見える人)へのからかいの言葉を否定しなかったことは山ほどあり、ときに同調してしまったことさえある。その中には、その場に当事者がいたこともあったはずで、筆者はその方を傷つけコミュニティから遠ざけてしまうとともに、筆者自身もその方から得られたはずの信頼と関係性を失っていたはずだ。
筆者は、旧友が筆者を信頼して自らのことを話してくれたことがたまらなくうれしい。再び作られていく関係性とともに、「見える世界」がまた少し広がり、新たな気づきが執筆意欲を掻き立てる。多様性を受容する社会は、マイノリティ(とされる人)がより活躍できるだけでなく、マジョリティ(とされる人)にとっても、より創造的で成長性の高いものになるはず。筆者はそう信じている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
第222回日本経済予測(改訂版)
不安定化する外部環境の下で日本経済の成長は続くか①米国景気・円高、②金利上昇リスク、③少子化対策、を検証
2024年09月09日
-
外貨建国内債の発行円滑化を念頭に外国口座管理機関の見直し(案)
外国口座管理機関の外貨DVP決済プラットフォームの活用を期待
2024年09月09日
-
2024年4-6月期GDP(2次速報)
設備投資や個人消費などの下方修正で成長率のプラス幅が縮小
2024年09月09日
-
非農業部門雇用者数は前月差+14.2万人
2024年8月米雇用統計:楽観視はできないが、足元は緩やかな雇用環境の悪化に留まる
2024年09月09日
-
在職老齢年金について考える
2024年09月09日