サマリー
◆本レポートシリーズは、デジタルアイデンティティの導入・実装の判断を支えることを目的に、各国の取組みと実装技術の両面から論点を整理してきた。第3部では、第2部までに浮かび上がったVC実装方式(SD-JWT VC、mdoc、VCDM等)を体系的に整理・比較し、第2部で示した日本の論点を技術観点から改めて考察する。
◆VC(Verifiable Credentials:検証可能なクレデンシャル)実装に関する技術標準は、大きく「フォーマット」(VCのデータモデルとセキュリティの仕組みを規定)と「プロトコル」(発行・提示手順を規定)に分けられる。フォーマットには、IETFが策定するSD-JWT VC、ISO/IECが策定するmdoc、W3Cが策定するVCDMの3系統の代表的な仕様があり、規定範囲や設計思想が異なる。
◆SD-JWT VCはWeb技術との親和性を重視するJSONベースの柔軟な設計、mdocは対面・近接通信での本人確認を重視した一体的な設計、VCDMはデータモデルのみを規定する柔軟な設計であり、DIDと組み合わせて多様な応用に展開されている。
◆各方式は、ユースケースの特徴と適合関係を持ち、各国の技術選択もこの関係を反映している。EUDIウォレット(EU Digital Identity Wallet)の共通仕様も3方式すべてに対応可能として位置づけており、単一方式への統一ではなく、複数方式の並立を前提とした相互運用が国際的な方向性として見られる。
◆日本ではmdocを活用した公的IDのデジタル基盤の実用化が進んでいる。今後は、この基盤の発展と並行して、資格・卒業証明、社員証等、民間分野での柔軟性の高い他の方式を主とした取組みの蓄積が重要となる。こうした蓄積により、利用者が自ら管理・提示できるVCが多様な分野に広がることで、利用者起点の情報制御が着実に拡張されていく。これは国際的な相互運用の方向性にも親和的であり、技術進化が続く本分野において、変化への対応力を高める基盤となる。
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