「Brexit劇場」は幕間の休憩時間
2016年08月03日
6月23日の国民投票で幕を開けた「Brexit(英国のEU離脱)劇場」は、予想外の展開で刻々と主役が入れ替わるドタバタ劇となり、世界の耳目を集めた。金融市場ではポンドが急落する一方で円が高騰し、安全資産として日米欧の国債が買われた。また世界的な株安も進行したが、Brexit劇場の開幕から1カ月が経過したところで、世界の主要株価指数は概ね国民投票直後の急落分を取り戻し、Brexitへの関心は大きく後退したかのようである。
Brexitショックが落ち着いた理由は大きく分けて2点に集約されるだろう。1点目は短期的な悪影響は比較的限定されることが認識されたことである。英国民がBrexitを選択しても、リーマン・ショック時のような流動性枯渇は発生しなかった。また、Brexitが実現するのは最短でも2年半後であり、それまでは英国とEUとの法的関係はこれまでとなんら変わらない。今後、英国で投資や雇用が手控えられて景気減速が見込まれるが、それが世界経済を急速に悪化させる要因にはならないと予想される。
とはいえ、Brexit問題はまだなにも解決しておらず、これから長期にわたって世界経済や金融市場にとって懸念材料となることは不可避である。それにもかかわらず世界の主要株価指数が反発した2点目の理由は、Brexit選択の中長期的な影響を判断しようにも不確定要素が多すぎて、現時点では判断がつかないことであると考えられる。Brexit実現に向けた交渉は英国の新政府がEUに対して離脱を通告することで開始される。しかし、現時点で分かっているのはこの時期が2017年以降になることと、英国は単一市場への従来通りの自由なアクセスを望む一方、労働力の移動の自由に関しては制限を設けたいと考えていることにほぼ限定される。具体的にどのような内容の要求を掲げて、どの時点でBrexitを通告するのか、EUがそれに対してどのように反応し、両者の交渉がどう進展するのか、分かからないことだらけである。
Brexit劇場は第一幕と第二幕の間の休憩時間に入ったところである。この間、金融市場の関心は4-6月期決算、米国の金融政策、米国の大統領選挙など新たな演目へと移っている。しかしながら、Brexit劇場もいずれ第二幕が開幕する。休憩時間のあとには大きな場面転換があったり、新たな主役が登場したりすることが多いものだが、まずはBrexit実現の旗振り役を任ぜられたメイ新首相がどのようにEU離脱を通告するのか注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
令和8年金商法等改正法案 スタートアップ企業への資金供給の促進に関する改正案
有価証券届出書の提出免除基準の引き上げや特定投資家私募の対象拡大
2026年04月30日
-
令和8年金商法等改正法案 サステナビリティ情報の開示・保証に関する改正案
セーフハーバー・ルールや第三者保証に関する規定を整備
2026年04月30日
-
2026年1-3月期GDP(1次速報)予測~前期比年率+3.3%を予想~
設備投資は減少も、個人消費と輸出に支えられ2四半期連続のプラス
2026年04月30日
-
FOMC 3会合連続で金利据え置きを決定
パウエル議長の任期満了、次期議長下での注目点は?
2026年04月30日
-
デジタルマネーは決済の主役になれるのか ~先行事例から考える普及要素~
特集記事「Web3・デジタルアセットが開く新世界」シリーズ
2026年04月28日

