GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道

目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題

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  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史

サマリー

◆最近では、高市総理大臣や一部閣僚から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等の国内資産への投資拡大に対する期待が高まっている。しかし、現在の中期目標期間中に基本ポートフォリオの見直しが行われる可能性は低く、GPIFのこれまでの投資スタイルを考えると、執行部の判断により、乖離許容幅を活用した国内資産への投資比率拡大も考えにくい。

◆他の施策目的のために年金積立金を利用させないということは、法令上の要請であることに加えて、これまでのGPIFのガバナンス改革も抑止力として働いている。

◆一方で、他の公的年金対比でGPIFの運用パフォーマンスは低迷しており、追加的な収益機会を逸している可能性がある。GPIF執行部は「複合ベンチマーク収益率の確保」という目標を重視し過ぎるあまり、トラッキングエラーの抑制が事実上の優先課題となり、長期的な運用収益向上に繋がることを期待して行うオルタナティブ投資の抑制や、昨年度のESG投資の大幅削減などにつながっている可能性がある。

◆巨額の運用益の計上により、GPIFに対する信任が高まっている今だからこそ、長期的視野に立った運用見直しを議論できるチャンスである。GPIFの現状の硬直的で長期的な視点を十分に持たない運用を見直す策としては、①中期目標における「複合ベンチマーク収益率の確保」を以前のように運用目標からリスク管理の位置づけに戻すこと、②運用の柔軟性を高めるため、「ベビーファンド」の導入により、レファレンスポートフォリオという基本ポートフォリオに縛られない長期的リターン追求型の運用の検討などが考えられよう。

◆GPIFの「他事考慮の禁止」という傘の下では、運用のあり方について、外部からの規律や比較検証が働きにくい環境にあることから、「日本成長戦略」でも示されている通り、他の公的年金運用主体との比較検証を行い、運用の改善につなげることが重要である。拙速な運用見直しの議論は避けつつ、長期的視点に立ち、真に被保険者の利益に資する改革議論が進むことを期待したい。

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