スピンオフによる事業創出
2006年03月10日
大企業などから新しい事業を創出する手法として「スピンオフ」が注目されている。一般に、親元企業との良好な関係を維持しながら自律的な意志決定が行えるような形で独立した会社をスピンオフ企業(またはスピンオフベンチャー)と呼ぶ。関連分野の研究者などの間では、親会社に従属する「子会社」や親会社との関係が途絶えている「スピンアウト」などと区別して議論されることが多い。
名称が一般的に使われるようになったのは最近だが、手法自体は決して新しくない。1935年に富士電機から分離した富士通や37年に豊田自動織機から独立したトヨタ自動車は、スピンオフから親会社をしのぐ世界的な企業になった成功事例である。90年代以降でも、日本電信電話から分離したNTTドコモやソフトバンクが設立したヤフーなどは業界をリードする大企業に成長している。
スピンオフを組織的に支援する仕組みを設けている大手企業も増えてきた。大企業の約4割が社員発案のベンチャー設立を支援する「社内ベンチャー制度」を持つ(スピンオフ・ベンチャー・ハンドブック、経済産業省)。従業員数が多く、幅広い事業分野を有する電機・自動車・電力などの各業界大手が特に積極的である。例えば、松下電器産業では、2001年から「パナソニック・スピンアップ・ファンド」を常設し、累計で22社の設立を支援している。
少子化で人口減少が予想される日本が経済発展を持続していくには、大企業が活用しきれていない人材・技術・事業アイデアなどを顕在化させることが有効になる。スピンオフ企業の多くはIPO(新規株式公開)を目指しており、株式市場で注目されるテーマになる可能性もある。今後も有望な事業分野を牽引するスピンオフ企業が続出することが期待される。
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