株主はリスクマネーを供給できているか-長寿企業と株主の絆を問う
2026年06月23日
戦後、東京証券取引所が再開した1949年に上場し、2026年時点で77年にわたり上場を継続している企業は260社を超える。人に例えれば喜寿を迎えるほどだ。米国では、新規上場・非公開化・再上場を通じた企業の入れ替わりが常態化しているのと比べ、日本企業の長寿性は際立つ。
しかし近年、こうした老舗企業においても、株主との間で成長戦略や還元方針を巡る議論を活発化させるにとどまらず、両者の溝が埋まらない事例も少なくない。その背景には、株主の期待と企業の実態との乖離、そして株主と経営者の関係の希薄化があるのではないだろうか。企業は継続企業(ゴーイングコンサーン)を前提として存続する一方で、株主や経営者は世代交代を通じて入れ替わる。この構造のもとで、現在の株主と企業との間に信頼が積み重なりにくくなっている可能性がある。
関係の綻びの端緒は企業側にあるのだろう。上場から長い年数が経過し、上場時はおろか、市場から資本を調達した記憶を持たない経営者も増える。その結果、株主から資本を預かっているという意識が薄れ、次世代への引き継ぎが株主価値の最大化より優先されるようになる。そして強まる株主からの要求との間で摩擦が生じ、場合によっては非公開化に至るケースもみられる。
企業としてはどうあるべきか。平時においては余剰な資本を圧縮し、適切な還元を行うことで株主からの信頼を積み上げる必要がある。そして、投資局面が訪れたときこそ、市場をも活用して資本を調達し、さらなる成長を目指すべきだ。その際には、株主割当による増資など、既存株主の権利に配慮した手法も存在する。
一方で、株主側も改めるべき点があるだろう。それは、成長を求める一方で、そのためのリスクは負おうとしない姿勢である。大規模投資に伴う増資に対して、株主は議決権の希薄化やEPSの低下を理由に否定的になる傾向がある。しかし、成熟企業に見られるような分散した株主構造のもとでは、増資によって一般株主にとっての議決権や支配権の低下が懸念される事態は想定されにくい。EPS低下についても、増資後の収益拡大が実現されることを前提とすれば、本質的には、増資への嫌気というより経営陣への信任の問題である。
それにもかかわらず、「投資は内部資金や借入れの範囲内で」といった条件付きでしか成長戦略を認めないのであれば、それは資本市場の論理と整合しないのではなかろうか。リスクを取らずにリターンだけを求める態度は、結果として成長機会を損なう。成熟企業が変革を遂げるには、しばしば第二創業に相当する規模の投資が必要となる。その際、増資を市場が受け入れられるかどうかこそが、株主と企業・経営者の間で薄れた信頼を結びなおせるかどうかの試金石となるのではないか。
企業側の資本効率に対する意識については、変革の兆しが見られる。株主はどうだろうか。米国では、大手プラットフォーマーが公表した公募増資に対して、投資家はこれを積極的に引き受けた。日本の資本市場が、リスクを引き受けて成長を支える場であり続けられるのかが問われる。
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