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会社法改正の早期実現を期待する

2013年04月03日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

昨年(2012年)9月に法制審議会が「会社法制の見直しに関する要綱」(以下、「要綱」)を採択してから既に半年が経過した。当初は、昨年秋の臨時国会か、今年(2013年)の通常国会にも、会社法を改正する法案が提出されるのではないかといわれていた。しかし、新聞報道等によれば、結局、今年の通常国会への法案提出は見送られる公算が大きいようである。夏に参議院選挙を控えた政治情勢などを踏まえれば、他にプライオリティの高い案件がある、会期が限られているなどの事情は理解できるものの、筆者としては、少々、残念に感じている。

世の中では、「要綱」で取り上げられている事項の中でも、とりわけ社外取締役(監査・監督委員会設置会社の創設や、社外要件の強化も、広い意味では、これに含まれるだろう)や多重代表訴訟を巡る議論に、関心が高いようである。(筆者も、最近2回のコラムで「社外取締役」を続けて取り上げているので、他人のことを論評できる立場にはないことは承知している。)しかし、「要綱」に盛り込まれている事項は、そればかりではない。実は、他にも上場会社のガバナンス、ファイナンス、M&Aなどにとって、重要な影響を及ぼし得る様々な事項が含まれているのである。

例えば、会計監査人の選解任等について、会社側から株主総会に提案される議案の内容の決定権限を監査役(会)に付与する、というものがある。現行法上、議案の内容の決定は、取締役会の権限であり、監査役(会)は、それに対して同意権(拒否権)を持つとされている。これを、監査役(会)が、直接、決定することにしようというわけである。

実は、これは、2007年に成立した「公認会計士法等の一部を改正する法律」に伴う、衆議院財務金融委員会及び参議院財政金融委員会での附帯決議以来、数年越しの案件である。もちろん、「今だって同意権(拒否権)があるのだから、実態は変わらない」、「某社のような監査役もグルになった不祥事なら、不当な会計監査人の交代は避けられない」といった批判はできるだろう。しかし、「会計監査人は、監査役(会)が候補を選び、株主総会が承認する」と、法律上、明記することは、「会計監査人は、誰の方を向いて活動すべきか?」を明らかにするという点で、大きな意義があると思われる。加えて、権限を付与される監査役(会)には、これまで以上に大きな責任と、その責任を果たすために必要な能力が要求されるという点で、実務上の意味も大きいだろう。

また、支配株主の異動を伴う第三者割当について、原則、10%以上の株主が反対を通知した場合、株主総会に諮らなければならないという事項が盛り込まれている。もちろん、規制対象となるのは、第三者割当によって50%を超える議決権を支配する株主が出現するようなケースであり、大幅な希釈化を伴う第三者割当全般が規制されるわけではない。その上、その会社の財産の状況が著しく悪化し、存立を維持するため緊急の必要がある、といった緊急事態には、適用除外も認められる。その意味では、「不十分」との批判も可能だろう。しかし、これにより、第三者割当を通じて、会社の支配権を取得・変更しようという動きには、一定の歯止めがかかることが期待できるだろう。特に、一旦、取締役会が決定したことが、株主の反対が大きければ、事後的に、ひっくり返されるリスクがあるというのは、実行する側にとって重い問題である。改正が実現すれば、最初から株主総会に諮った上で第三者割当を行う、あるいはTOBなど他の方法による支配権取得を行う、といった方向に、実務も進んでいくことが予想されよう。

さらに、金融商品取引法上の一定の公開買付義務につき、重大な違反を犯した者の議決権を、他の株主からの請求があれば、会社法上も、原則、差し止める(停止する)という事項もある。これは、金融商品取引法と会社法との調整(いわゆる公開会社法制)に向けた小さな一歩ではあるが、将来に向けて大きな意味を持つ一歩だともいえるだろう。

「要綱」を踏まえた会社法の改正が、早期に実現することを期待したい。

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