「資源ブーム」に強気の豪州資源企業
2007年06月25日
6月初めに豪州を訪問し、企業を取材する機会を得た。2000年以降、豪州を定期的に訪問しているが、今回訪問した第一印象は、「企業が非常に活気に満ちている」というものだった。マクロ統計が示す以上に、豪州企業、なかでも資源関連企業のマインドは強まっている。 これには、「資源ブーム」に対する見方が大きく変わってきたことが影響しているようだ。05年頃はまだ「循環的な拡張期」と「構造的な拡張期」の見方が半々だったが、06年4月の訪豪時には「今回の資源ブームは、資源需要が循環的に変動する中での拡大期にあたるのではなく、中長期的に需要が増加していく構造的変化を伴った拡大期だ」との見方へ傾き始めていた。さらに、今回の訪問時にはこの「構造的な拡張期」との見方がより一層強まっていた。 例えば、アルミナ社は、世界のアルミニウム・アルミナ消費量はアジア(05年の1,310万t→2020年の3,160万t)が牽引役となって2020年までに05年の約2倍に膨れ上がり、供給は過去20年間の平均増加ペースの約3倍へ加速する必要があるとの見通しを示した。 マッカーサー・コール社も、07年明け以降、港湾設備が再びボトルネックとなっているが、石炭に対する需要は増加基調を辿る見通しであり、輸送設備が整いさえすれば、石炭の輸出増が業績改善につながるとの見方を示した。 世界的な資源需要増の牽引役は中国である。豪州は中国需要の高い伸びを見込んで、官民一体となって中国向け輸出力を高める姿勢を強めている。豪州の鉱山部門の企業投資額は06/07年度の前年比+31.4%から07/08年度は同+57.3%へ拡大される計画であり、06/07年度の民間鉱物探査費(石油を除く)は前年比+56%の40億豪ドル超が見込まれている。 銅・金を中心に鉱山開発・生産を行うオクシアナ社は、中国沿岸部の工業化・都市化に伴って都市部への移住者が増加し、自動車や住宅、電化製品の消費増につれて資源需要は中長期的に続くとみている。三大非鉄メジャーの一角を占めるリオ・ティント社も、中国の発電量の約4分の3を占める火力発電への高い依存が続き、石炭需要は今後も増加すると強気であった。 日本や韓国の高度成長期の経験を中国に当てはめて推測すると、中国における資源の一人当たり消費量は2020年頃にかけて増加し、資源需要は中長期的に拡大基調で推移する見通しである。また、中国は08年に北京オリンピックを控えているとはいえ、オリンピック関連の建設需要や消費が経済全体に占める割合はさして大きくなく、オリンピック後の景気悪化は想定しにくい。世界的な資源需要が「構造的な拡張期」を迎えるなかで、「資源ブーム」はまだまだ続きそうである。
|
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日