急拡大する米国ETF市場
2007年02月02日
低コスト、取引の柔軟性が特徴
米国のETF(※1)市場が急速に拡大している(図参照)。米国投資会社協会(ICI)によると、2006年11月末時点におけるETFの本数は333本と、05年末時点の201本から6割超も増加。また、同月末の純資産額は約4,000億ドルと、投資信託市場全体(約10兆ドル)の約4%にとどまっているが、93年の導入以来、年率では倍増ペースで拡大しており、近年急速にその存在感が高まっている。
ETF市場拡大の背景には、まず世界の株式市場がここ数年堅調なパフォーマンスを遂げていることが挙げられる。米国ETFの9割超は株価指数連動型で、そのうち約7割が国内株価指数連動型であるが、米国の代表的な株価指数S&P500は03年以降4年連続で上昇しており、この間年率+13%のパフォーマンスを記録している。また、MSCI World(米国除く)で世界の株価パフォーマンスをみると、04年以降3年連続で上昇しており、この間年率+25%の高い伸びを示している。次に、ETF独自の要因として、従来のオープンエンド型(※2)インデックスファンドに比べ、運用コストと取引の柔軟性で優れていることが挙げられる。インデックス運用が持つ売買回転率の低さに加え、従来のオープンエンド型インデックスファンドと違い、ファンドと投資家による直接的な取引がないため、ファンドが投資家の購入や売却に併せて市場で売買する必要がない。また、その結果、課税対象になる実現益が小さくなる。したがって、従来のオープンエンド型インデックスファンドに比べ、運用コストが安くなる傾向がある。また、通常のオープンエンド型インデックスファンドは、運用会社が1日1回算出する基準価格に基づいてしか売買ができないのに対し、取引所に上場しているETFは、通常の株式同様、取引時間中はいつでも取引可能である。
米国のETF市場は今後も拡大が続くと見込まれる。まず、長期的なパフォーマンスでみると、アクティブ運用のファンドの多くが、インデックス運用のファンドに比べた運用コストの高さにもかかわらず、インデックス運用のファンドのパフォーマンスを下回っており、今後インデックス運用のファンドの人気が高まる可能性がある。インデックス運用を低コストで機動的に提供できるETFが注目されよう。また、ETF市場では、S&P500への連動を目指したスタンダード&プアーズ預託証書(通称:スパイダーズ)が93年に導入されたのに始まり、国別株価指数や債券指数、金の現物価格に連動するETFなど、多様な商品が登場している。個人向け資産運用業界が近年、個別銘柄の選択などから資産構成全体の提案に重点を移すなか、1つの市場で株式から商品までを幅広く低コストで提供できる点でも、ETFは注目されよう。
(※1)ETFとはExchange Traded Funds(上場投資信託)の略称で、通常取引所に上場されているインデックスファンドのことを指す。
(※2)発行者が、原則、いつでも純資産価格(NAV)に基づいて、発行証券を買い戻すことを保証している投資信託。

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