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新型コロナウイルスとファンドの流動性

2020年06月17日

金融調査部 主任研究員 鈴木 利光

2020年6月4日、金融庁は、投資運用業者における、オープンエンド型公募投資信託の流動性リスク管理についての行為規制を整備した(※1)。平たく言えば、ファンドの流動性規制が整備された、ということになる。

このタイミングでの公表であることから、これが新型コロナウイルスの感染拡大を受けての措置かとも受け取れるが、実際は異なる。

ファンドの流動性規制の議論のルーツは、今から5年以上前の2015年3月に遡る。金融安定理事会(FSB)が、急激な成長と低流動性資産の保有増加傾向を見せていた資産運用業に、次なる金融危機の芽となる可能性を見出したことがきっかけである。

今回の金融庁によるファンドの流動性規制の整備は、FSBによる政策提言レポート(2017年1月公表)や、その委任を受けた証券監督者国際機構(IOSCO)のガイダンス(2018年2月公表)の国内実施、という位置づけになる(※2)。

しかし、ファンドの流動性規制の内容は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気後退で、その流動性に対する懸念がささやかれた、CLO(Collateralised Loan Obligations)の保有に大いに関係する(※3)。そのため、新型コロナウイルスは、ファンドの流動性規制の整備と、あながち無関係とは言えない。

それでは、今般整備されたファンドの流動性規制のなかで、重要なポイントはどこになるだろうか。

この整備は、「金融商品取引業等に関する内閣府令及び投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」に基づいて行われているのだが、この内閣府令では、ファンドの運用に関し、保有する有価証券について解約の申入れに応ずることができなくなることを防止するための「合理的な措置」を講ずること、が求められているにとどまる。

その「合理的な措置」の具体的な内容は、投資信託協会の定める、「投資信託等の運⽤に関する規則」等の自主規制の改正で明らかになっている。

まずもって、こうした、府令レベルでは詳細に踏み込まず、自主規制に具体的な内容を(実質的に)委ねた、という点が、重要なポイントの一つである。

内容面では、最も重要なポイントは、定期的なストレステストの実施が求められている点である。ストレスシナリオ(市場暴落や自然災害)等は、社内規則にて定められることが想定されている。

また、保有資産の流動性が極端に低下したこと等により追加設定や一部解約を停止した場合には、ウェブサイト等で速やかに開示をすることが求められる点も重要である。

さらに、投資家保護を図るべく、交付目論見書に、ファンドの流動性リスクの説明や、これにより解約請求の制約等があり得ることの説明や、低流動性資産を主要投資対象とするファンドの注意喚起文言を記載することが求められている点も、小さくないインパクトがあろう。

ファンドの流動性規制の整備は、2022年1月から適用が開始される。もっとも、投資運用業者としては、CLOポジションの見直しも含めて、前倒しでファンドの流動性規制の整備に対応することが望ましいだろう。

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金融調査部
主任研究員 鈴木 利光