伸び悩む英国の労働生産性
2015年12月07日
多くの先進諸国の労働生産性は、金融危機以降堅調に回復している一方、英国ではそうした動きが思うように進んでいない。英国政府統計局(ONS)によれば、2014年の英国における労働生産性は時間当たりの生産でも、就業者一人当たりの生産でもG7の中で日本に次ぐ低さとなり、依然として2007年の水準を下回っている。
こうした状況を受けて、英国財務省は労働生産性上昇に向けた長期的な政策について言及した“Fixing the foundations : Creating a more prosperous nation”の中で、長期的な投資を呼び込むこと、経済基盤を強化することが必要であると述べている。英国で労働生産性の改善が進んでこなかった理由の一つに、低賃金で労働生産性の低い産業での雇用が相対的に増加したことが大きく影響していると考えられており、高技能労働者の育成のため、広範囲の地域で教育カリキュラムの質を高める等の諸政策を打ち出した。また、高賃金、低税率かつ低福祉依存の社会づくりが、労働生産性改善に寄与するとしている。例えばその一つが、法人税率を現行の20%から2017年に19%、2020年に18%と段階的に引き下げることであり、企業競争力の向上が、貿易にもプラスの効果を生むとしている。
英国が労働生産性の改善を重視するもう一つの背景には、財政健全化が重要な課題であるという事情がある。英国予算責任局(OBR)の試算によると、高い労働生産性のもとでは政府債務残高は2019/20年度までに対GDP比56.7%となるのに対し、低い労働生産性のもとでは同86.6%になると推計しており、労働生産性の回復の程度によって、結果に大きな隔たりが生じてくることが指摘されている。
労働生産性の上昇が賃金上昇を促せば、物価を押し上げる要因にもなりうる。英国の物価の上昇抑制圧力は依然として大きく、足元10月の消費者物価上昇率は前年比-0.1%と2015年以降はゼロ近傍での推移が続いている。そのため、米国の利上げ観測が高まる一方で、英国にとってそれはまだ少し先のことになるとの見通しである。労働生産性の改善が、賃金上昇をもたらし、英中銀(BOE)が掲げる2%インフレターゲットを達成するというのが理想のシナリオであるが、その実現時期については諸政策を着実に遂行できるかにかかっており、日本にとっても同じことが言えるかもしれない。

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