「捨てる」経済
2015年04月23日
筆者はモノを捨てるのが得意でない。いつか使うかも、と思うと捨てられないのだが、そうこうしている間に整理がつかなくなり、使わない荷物や書類が溜まってしまうのだ。おそらく、このようなことは筆者だけでなく、日本中で起きている。流行の「断捨離」は、年を重ねてくるとそう簡単なことではない。ただ、一人ひとりにとっては、単に後の片付けが面倒くさくなるだけと思っていても、それは最終的に子孫や他人に片付けを押し付けることになると肝に銘じておく必要がある。マクロで見たときには、経済活動に対して負の効果を及ぼしかねない“レガシー”となる。「片付ける」「捨てる」商売は増えるかもしれないが、それ自体の付加価値は大きいものではないだろう。
日本で進行する人口減少はすでに様々な問題を引き起こしているが、それを助長する要因の一つが「捨てられない」ことにある。端的な例として、空き家問題があるだろうし、地方の自治体では老朽化インフラの問題も深刻だ。あまり使われない施設を残しておくことは、維持コストが嵩むばかりで、日本の成長につながるとは思えない。本来なら、活用できないのなら捨ててしまった方が、生産性向上も期待されるかもしれない。
付加価値ベースの経済規模は大きくなるに越したことはない。ただし、それはフローの概念においての理想であり、ストックの概念においては必ずしも大きければよい、というものでもない。人口に見合ったストックという観点も必要になるし、成熟した経済においては効率性が求められることになる。ミクロの企業経営における今日の問題として、収益性の低い資産を多く抱えていることが指摘される。典型的には現金や預金であるが、コーポレートガバナンスの議論の中では、持ち合い株式にも疑問が投げ掛けられている。これらを削減し(捨てるわけではないが)、より収益性の高い資産に入れ替えるべきとの議論が高まっている。
受け継いだレガシーを捨てることは簡単なことではない。単に経済性の問題ではなく、込められている先人の思いや努力も無視できない。しかし、捨てずして新陳代謝を図ることはできず、成長への投資にも踏み出せない、とは言えまいか。先延ばしすれば、単に将来のコストが膨らむだけであり、先人がそれを望んでいるとは思えない。
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