資金循環統計(2016年4-6月期)

主体により異なるマイナス金利政策導入の効果

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  • 中里 幸聖
  • 菅谷 幸一
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠
  • 金融調査部 研究員 森 駿介

サマリー

◆日本銀行(以下、日銀)から2016年4-6月期の資金循環統計(速報)が公表された(※1)。株安・円高の影響を受けた株式等や外貨建て資産の目減りにより、家計や企業等の金融資産残高は減少となった。


◆家計の金融資産残高は、株式等や投資信託の残高減少を主因に、2四半期連続で減少した。これらリスク資産の残高減少は、株価下落の影響に加え、経済の先行き不透明感の高まりを背景とする資金純流出も寄与した。


◆預金取扱機関(銀行等)は、引き続き国債の売却を進める一方、貸出や対外証券投資といったリスク資産が減少したが、現金・預金の積み上がる状況が続いている。預金取扱機関におけるポートフォリオリバランスや、借入需要の目立った増加は見られない。


◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株価下落および円高進行の影響により減少した。一方、フローの動向からは、債券を売却し、株式等や対外証券投資などのリスク資産を買い増す動きが引き続き確認された。


◆事業法人(民間非金融法人企業)の金融資産残高は、株価下落と円高進行により減少した。一方、現金・預金残高は4四半期連続で過去最高を更新している。資金調達を見ると、借入、株式等はマイナスであるが、事業債はプラスとなっている。マイナス金利の効果が少しずつ表れ、事業債による資金調達を徐々に増やしていると推測される。


◆海外部門の金融資産残高は、株式の減少を金融派生商品の増加が上回る形で2四半期ぶりの増加となった。株式等は、フローでは買い越しとなっていることから、残高の減少は株価下落の影響と思われる。一方、ドル投円転コストの低下を背景に、国債・財投債への資金純流入が確認される。


【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】


(※1)今回の資金循環統計では、①国際収支関連統計の第6版化に伴う見直し、②現金の部門別保有残高の見直しが行われており、2005年1-3月期以降の計数が改定された。主な変更点として、①対外証券投資を中心とする対外資産残高が、家計で上方改定、民間非金融法人企業で下方改定された、②現金の保有残高が、家計で上方改定、民間非金融法人企業で下方改定された。詳細については日本銀行Web siteを参照のこと。

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