2016年09月29日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2016年4-6月期の資金循環統計(速報)が公表された(※1)。株安・円高の影響を受けた株式等や外貨建て資産の目減りにより、家計や企業等の金融資産残高は減少となった。
◆家計の金融資産残高は、株式等や投資信託の残高減少を主因に、2四半期連続で減少した。これらリスク資産の残高減少は、株価下落の影響に加え、経済の先行き不透明感の高まりを背景とする資金純流出も寄与した。
◆預金取扱機関(銀行等)は、引き続き国債の売却を進める一方、貸出や対外証券投資といったリスク資産が減少したが、現金・預金の積み上がる状況が続いている。預金取扱機関におけるポートフォリオリバランスや、借入需要の目立った増加は見られない。
◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株価下落および円高進行の影響により減少した。一方、フローの動向からは、債券を売却し、株式等や対外証券投資などのリスク資産を買い増す動きが引き続き確認された。
◆事業法人(民間非金融法人企業)の金融資産残高は、株価下落と円高進行により減少した。一方、現金・預金残高は4四半期連続で過去最高を更新している。資金調達を見ると、借入、株式等はマイナスであるが、事業債はプラスとなっている。マイナス金利の効果が少しずつ表れ、事業債による資金調達を徐々に増やしていると推測される。
◆海外部門の金融資産残高は、株式の減少を金融派生商品の増加が上回る形で2四半期ぶりの増加となった。株式等は、フローでは買い越しとなっていることから、残高の減少は株価下落の影響と思われる。一方、ドル投円転コストの低下を背景に、国債・財投債への資金純流入が確認される。
【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】
(※1)今回の資金循環統計では、①国際収支関連統計の第6版化に伴う見直し、②現金の部門別保有残高の見直しが行われており、2005年1-3月期以降の計数が改定された。主な変更点として、①対外証券投資を中心とする対外資産残高が、家計で上方改定、民間非金融法人企業で下方改定された、②現金の保有残高が、家計で上方改定、民間非金融法人企業で下方改定された。詳細については日本銀行Web siteを参照のこと。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
マイナス金利政策が導入された今期、どのような影響が表れたか?
資金循環統計(2016年1-3月期)
2016年06月27日
-
資金循環統計(2015年10-12月期)
今期から2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースで公表
2016年04月22日
-
リスク資産、株安で残高減も資金流入は継続
資金循環統計(2015年7-9月期)
2015年12月21日
-
家計や企業の金融資産残高が過去最高を更新
資金循環統計(2015年4-6月期)
2015年09月24日
-
家計によるリスク資産への投資が増加
資金循環統計(2015年1-3月期)
2015年07月01日
-
年金ポートフォリオの見直しが加速
資金循環統計(2014年10-12月期)
2015年03月23日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
資金循環統計(2017年4-6月期)
株価の上昇が金融資産残高の増加に寄与
2017年10月02日
-
ポートフォリオ・リバランス効果の発現か?
資金循環統計(2014年7-9月期)
2014年12月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
経済指標の要点(12/14~1/17発表統計分)
2025年01月17日
-
FISC、「金融機関によるAIの業務への利活用に関する安全対策の観点からの考察」の公表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月17日
-
IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度『JC-STAR』の開始
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月16日
-
2025年度のPBはGDP比1~2%程度の赤字?
減税や大型補正予算編成で3%台に赤字が拡大する可能性も
2025年01月15日
-
ASEAN最大のグローバルサウス・インドネシアのBRICS加盟が意味することは?
2025年01月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日