2016年12月26日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2016年7-9月期の資金循環統計(速報)が公表された。株高により家計、事業法人、年金等の金融資産残高が増えた一方で、金利上昇を背景に債券への資産配分の大きい預金取扱機関や生命保険の残高が減少した。
◆家計の金融資産残高は、株価の上昇による株式等の残高増加を主因に、3四半期ぶりに増加に転じた。但し、フローで見ると株式や投資信託等のリスク資産は資金純流出となっている。一方、低金利下における企業の積極的な個人向け社債発行を背景に、事業債への資金純流入が続き、資金純流入額は2000年以降で最大だった。
◆預金取扱機関(銀行等)は、これまで同様に国債の売却を進める一方、貸出や対外証券投資といったリスク資産を増やして(買い越して)いるが、依然として現預金の積み上がる状況が続いている。
◆生命保険の金融資産残高は、金利上昇による国債やその他債券の時価下落を要因に減少した。国内での運用難が継続する中、対外証券投資は3四半期連続で過去最高の買い越し額を記録した。
◆事業法人(民間非金融法人企業)の金融資産残高は、現金積み増しと株価上昇により増加に転じた。現金・預金残高は5四半期連続で過去最高を更新している。資金調達を見ると、借入はプラス、株式等は若干のプラス、事業債は若干のマイナスとなっており、マイナス金利に伴う事業債による資金調達は一段落した形となっている。
◆海外部門の金融資産残高は、株式等や貸出残高の増加により2四半期連続の増加となった。株式等のフローでは売り越しとなっていることから、残高増加分は株価上昇によるものと思われる。一方、ドル投円転コストの低下を背景に、国債・財投債への資金純流入は引き続き確認できた。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
資金循環統計(2017年4-6月期)
株価の上昇が金融資産残高の増加に寄与
2017年10月02日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
リスク資産、株安で残高減も資金流入は継続
資金循環統計(2015年7-9月期)
2015年12月21日
-
資金循環統計(2015年10-12月期)
今期から2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースで公表
2016年04月22日
-
マイナス金利政策が導入された今期、どのような影響が表れたか?
資金循環統計(2016年1-3月期)
2016年06月27日
-
資金循環統計(2016年4-6月期)
主体により異なるマイナス金利政策導入の効果
2016年09月29日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日