2016年06月27日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2016年1-3月期の資金循環統計(速報)が公表された。マイナス金利政策が導入された今期、各主体の投資行動にどのような変化をもたらしたのかが注目される。
◆家計の金融資産残高は、株式等、現預金、投資信託を中心に減少した。マイナス金利政策導入の影響による預金金利の引き下げ後も家計資産のポートフォリオに占める現預金の割合は微増となっている。
◆預金取扱機関(銀行等)は、これまで同様に国債の売却を進める一方、貸出や対外証券投資といったリスク資産を増やして(買い越して)いるが、依然として現預金の積み上がる状況が続いている。マイナス金利政策の導入当初の段階としては、ポートフォリオリバランスの促進効果は発現していないと言える。
◆生命保険の金融資産残高は、金利低下による国債やその他債券の時価上昇を要因に増加した。前期に引き続き、対外証券投資は残高・フローともにプラスとなった。
◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株価下落の影響により減少した。一方、フローの動向からは、債券を売却し、株式等や対外証券などのリスク資産を買い増す動きが引き続き確認された。
◆事業会社(民間非金融法人企業)の金融資産残高は、株価下落と円高進行により減少に転じた。一方、現預金残高は3四半期連続で過去最高を更新している。資金調達を見ると、借入、事業債、株式等いずれもマイナスであり、マイナス金利政策が導入されたものの、企業の資金需要は盛り上がりに欠けていることがうかがわれる。
◆海外部門の金融資産残高は、株価下落による評価額減少の影響を受けて、減少した。フローでは、株式等、国債、その他債券が売り越しとなった一方、貸出、現預金が買い越しとなっている。
「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
リスク資産、株安で残高減も資金流入は継続
資金循環統計(2015年7-9月期)
2015年12月21日
-
家計や企業の金融資産残高が過去最高を更新
資金循環統計(2015年4-6月期)
2015年09月24日
-
家計によるリスク資産への投資が増加
資金循環統計(2015年1-3月期)
2015年07月01日
-
年金ポートフォリオの見直しが加速
資金循環統計(2014年10-12月期)
2015年03月23日
-
資金循環統計(2016年4-6月期)
主体により異なるマイナス金利政策導入の効果
2016年09月29日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
家計のマネーはリスク資産に向かうのか
資金循環統計(2014年4-6月期)
2014年09月22日
-
ポートフォリオ・リバランス効果の発現か?
資金循環統計(2014年7-9月期)
2014年12月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日