高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか

財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる

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2025年12月18日

サマリー

◆「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権は11月に総合経済対策を閣議決定し、12月にはその裏付けとなる補正予算も成立した。事業規模は42.8兆円と、リーマン・ショックやコロナ禍、ロシアのウクライナ侵略の影響を受けた時期の経済対策に次ぐ歴代6番目の大きさになった。近年は税収や税外収入の増加分等を上回る規模の経済対策の策定が続いており、公債金の純増が常態化している。

◆高市政権の財政拡張的な政策スタンスに対する市場の思惑もあって、為替は円安方向で推移している。マンデル=フレミングモデルでは、財政支出の拡大は自国通貨の増価を招くはずだが、既存の実証研究では、財政支出の拡大ショックは自国通貨の減価に繋がっているとの報告も多い。筆者が日本において分析した結果、実質政府債務残高が1%増加すると、輸入の増加を通じて、実質実効為替レートが1年後に0.9%程度円安となることが示された。

◆高市政権は総合経済対策の第一の柱として物価高対策を盛り込んだが、財政支出の拡大に伴って円安圧力がかかれば、国内物価の押し上げ要因となる。こうした影響を防ぐためには、実質政府債務残高を安定的に引き下げることが重要である。高市政権は成長力強化による財政健全化を目指しているが、財政支出拡大による実質GDPの押し上げだけでは政府債務残高対GDP比を引き下げることは難しい。物価上昇による実質的な債務圧縮を目指しているわけではないのであれば、プライマリーバランス(PB)の黒字化を引き続き目指すべきだ。

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