2015年12月21日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2015年7-9月期の資金循環統計(速報)が公表された。前期(2015年4-6月期)までは、株価上昇等を背景に、金融資産残高を増加させてきた主体が多かったが、今期は、円高・株安の影響により、減少に転じた主体が多かった。
◆家計の金融資産残高は、株式や投資信託の残高減少を主因に、6四半期振りに減少に転じた。リスク資産は、残高では株価下落の影響により減少となったものの、フローでは株式や投資信託が買い越しとなった。個人投資家は、株価下落時に買い越す傾向があり、今期はこのような傾向が表れたと言える。
◆預金取扱機関(銀行等)の金融資産残高は、国債売却や株価下落の影響を受け、減少に転じた。一方、貸出の増加や対外証券投資の取得超が見られるなど、リスクテイクを行っている状況も窺える。ただし、国債売却等により現預金が積み上がっており、資金運用難の状況にあることが示唆される。
◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株安の影響を受け減少した。株式、対外証券投資、投資信託は、残高では減少したものの、フローではいずれも増加しており、引き続きリスク資産の比重を増やす方向でのポートフォリオ再構築が進められていたことが推察される。
◆事業会社(民間非金融法人企業)の金融資産残高は、5四半期振りの減少となった。その主な要因は、株安・円高を受けた株式、対外直接投資の評価損の発生によると思われるが、フローではいずれも流入超となった。一方、現預金残高は過去最高を更新しており、高水準の保有状況が続いている。
◆海外部門の金融資産残高は、株式残高の減少を主因に、5四半期振りの減少となった。株式は、フローでも売り越しとなったが、残高減少分の大半は株価下落によるものと思われる。一方、国債は、残高・フローともにプラスとなり、株式から国債へと資金フローが変化した様子が窺える。この背景には、海外投資家のリスク許容度の低下やドル投円転コストの低下があると推察される。
【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】
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