2017年10月02日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2017年4-6月期の資金循環統計(速報)が公表された。2017年4-6月期の金融市場では、対ドルや対ユーロで円安が進み、株価も上昇した。対外証券投資や株式の資産価格の上昇が、各主体の金融資産残高の増加に寄与した。
◆家計の金融資産残高は、株価の上昇と季節要因(賞与)が残高の増加を牽引した。ただし、現金・預金が積み上がり金融資産残高の5割を上回る一方、フローで見ると債券、株式、投資信託は売り越しとなっている。
◆預金取扱機関(銀行等)は、これまでと同様に国債の売却を進めているが、その売却代金の一部が日銀の当座預金として積み上がる状況が続いている。また、貸出残高は2016年4-6月期以来の減少に転じた。海外向け貸出のうち外貨建て分が円高を受けて目減りしたことが一因となったと考えられる。
◆生命保険の金融資産残高は、対外証券投資の評価増を主な要因に増加した。国債は過去最高の売り越しとなった一方で、対外証券は買い越しであり、引き続き対外証券投資に積極的な様子が見られる。
◆年金の金融資産残高は増加した。企業年金の残高は減少したが、公的年金の残高の増加がこれを上回った。
◆民間非金融法人企業(事業法人)の金融資産残高は、株式等の評価増が主因となって増加した。企業の海外展開は引き続き活発であり、対外投資残高も増えた。企業の資金は余剰状態にあり、足元の金利は低下しているものの、資金調達は抑えられた。
◆海外部門の金融資産残高は株高を主因として増加した。フローで見ても海外による株式売買は2四半期ぶりに取得超へと転じた。
【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
資金循環統計(2016年4-6月期)
主体により異なるマイナス金利政策導入の効果
2016年09月29日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
資金循環統計(2017年1-3月期)
対外証券投資が一部の主体で売り越しに
2017年07月07日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日