資金循環統計(2015年10-12月期)

今期から2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースで公表

RSS
  • 中里 幸聖
  • 政策調査部 研究員 佐川 あぐり
  • 菅谷 幸一
  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆日本銀行(以下、日銀)から2015年10-12月期の資金循環統計(速報)が公表された。前期(2015年7-9月期)までは、株価下落等を背景に、金融資産残高を減少させた主体が多かったが、今期は、相場の持ち直しにより、増加に転じた主体が多かった。


◆家計の金融資産残高は、現預金、株式等、投資信託を中心に増加し、過去最高(※1)となった。現預金の増加に関しては賞与時期という季節要因、株式等および投資信託の増加に関しては株価が堅調に推移したことが背景にはあろう。


◆預金取扱機関(銀行等)は、国債売却により国債残高を減少させているものの、貸出や対外証券投資の増加(買い越し)が見られるなど、リスクテイクを行っている状況が窺える。ただし、現預金の増加が続いており、資金運用難の状況にあることが示唆される。


◆生命保険の金融資産は、フローで見ると、現預金や国内債券から、対外証券投資、貸出、株式等などのリスク資産に、資金がシフトしたことが推察される。


◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株価の持ち直しにより増加した。株式等、対外証券投資は、フローではわずかな増加であるが、残高が増加した。一方、リスク資産以外はフローで減少しており、引き続きリスク資産の比重を増やす方向でのポートフォリオ再構築が進められていたと推察される。


◆海外部門の金融資産残高は、株式等や国債を中心に増加した。国債の内訳を見ると国庫短期証券の保有が増加している。これはドル投円転コストが継続的に低かったことから投資家が短期的なキャピタルゲインを期待したことが背景にはあろう。


◆なお、今期の資金循環統計から、2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースに基づく同統計が公表されている。見直しの主なポイントは、(1)金融取引の計上方法の精緻化、(2)取引項目の見直し、(3)制度部門分類の見直し、である。


【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】


(※1)2008SNAベースで遡及可能な2005年以来。以下同じ。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート