2016年04月22日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)から2015年10-12月期の資金循環統計(速報)が公表された。前期(2015年7-9月期)までは、株価下落等を背景に、金融資産残高を減少させた主体が多かったが、今期は、相場の持ち直しにより、増加に転じた主体が多かった。
◆家計の金融資産残高は、現預金、株式等、投資信託を中心に増加し、過去最高(※1)となった。現預金の増加に関しては賞与時期という季節要因、株式等および投資信託の増加に関しては株価が堅調に推移したことが背景にはあろう。
◆預金取扱機関(銀行等)は、国債売却により国債残高を減少させているものの、貸出や対外証券投資の増加(買い越し)が見られるなど、リスクテイクを行っている状況が窺える。ただし、現預金の増加が続いており、資金運用難の状況にあることが示唆される。
◆生命保険の金融資産は、フローで見ると、現預金や国内債券から、対外証券投資、貸出、株式等などのリスク資産に、資金がシフトしたことが推察される。
◆年金(年金基金と公的年金の合計)の金融資産残高は、株価の持ち直しにより増加した。株式等、対外証券投資は、フローではわずかな増加であるが、残高が増加した。一方、リスク資産以外はフローで減少しており、引き続きリスク資産の比重を増やす方向でのポートフォリオ再構築が進められていたと推察される。
◆海外部門の金融資産残高は、株式等や国債を中心に増加した。国債の内訳を見ると国庫短期証券の保有が増加している。これはドル投円転コストが継続的に低かったことから投資家が短期的なキャピタルゲインを期待したことが背景にはあろう。
◆なお、今期の資金循環統計から、2008SNAを踏まえた見直し後の新ベースに基づく同統計が公表されている。見直しの主なポイントは、(1)金融取引の計上方法の精緻化、(2)取引項目の見直し、(3)制度部門分類の見直し、である。
【「なるほど金融」の「おカネはどこから来てどこに行くのか 資金循環統計の読み方」もご参照ください。】
(※1)2008SNAベースで遡及可能な2005年以来。以下同じ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
リスク資産、株安で残高減も資金流入は継続
資金循環統計(2015年7-9月期)
2015年12月21日
-
家計や企業の金融資産残高が過去最高を更新
資金循環統計(2015年4-6月期)
2015年09月24日
-
家計によるリスク資産への投資が増加
資金循環統計(2015年1-3月期)
2015年07月01日
-
年金ポートフォリオの見直しが加速
資金循環統計(2014年10-12月期)
2015年03月23日
-
資金循環統計(2016年4-6月期)
主体により異なるマイナス金利政策導入の効果
2016年09月29日
-
資金循環統計(2016年7-9月期)
生保による対外証券投資は3期連続で過去最高の買い越し額を記録
2016年12月26日
-
異次元緩和政策で供給された資金に変化の兆し
資金循環統計(2013年10-12月期)
2014年03月26日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
資金循環統計(2016年10-12月期)
株は売り越しが大半だが、株高と円安で残高増加
2017年03月28日
-
ポートフォリオ・リバランス効果の発現か?
資金循環統計(2014年7-9月期)
2014年12月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
-
CGコードの見直しで会社の現預金保有に焦点
現預金の必要以上の積み増しについて検証・説明責任の明確化を検討
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日