世界の自然災害リスク増加と、災害大国日本の役割
2026年11月06日
2026年も日本や世界で大規模な自然災害が起きている。日本では都市部近郊における水害が相次いだことにもみられるように、実際の被災経験や、多数の報道等を通じて、自然災害の頻発や激甚化が幅広い人々に意識されやすい状況となっている。
国連防災機関の報告によると、世界の自然災害による総合的なコストは、近年では速いペースで増加が継続しており、2023年(直近データ)には約2.3兆ドルに達したと試算されている(※1)。これを対世界GDP比でみると、2000年と比べて2023年には約3倍に拡大した計算だ。印象だけでなく、実際に災害コストが拡大しているといえよう。そして、近年の増加もさることながら、足元でGDP比2%超に達した災害コストの水準は、経済活動においても決して無視できないだろう。
災害コスト拡大の背景には様々な要因が考えられる。温暖化などに代表される地球規模の気候変動に加えて、グローバルな生産・供給体制の普及による開発地域の拡大、それとは逆に、主に先進国では地方部の過疎化により適切な整備や監視が行われなくなった地域の増加などが挙げられよう。多様化や精緻化が進んだ人間社会も、自然災害の激甚化に対応しきれなくなっていると考えられ、災害コスト拡大の一因になっているといえよう。
自然災害に対して、これまで実施されてきた災害対策(国土強靱化)や温暖化対策は奏功しているのだろうか。その検証は難しいが、損害額とともに投資額も拡大しやすい中では、投資の費用対効果についても問われることになろう。地球の長い歴史においては、人類の活動以前から、現在以上の振れ幅での気候変動が起こったと考えられている。近年では世界的に気候変動対策が行われているものの、なお温暖化が進む現実を踏まえれば、ここからの投資は自然災害が起こることを前提とし、それに適応するレジリエンス強化に一定程度シフトすべきかもしれない。
日本においては、政策としての災害対策はややトーンダウンしている印象がある。現在の「日本成長戦略」における2040年度までの官民投資計画でも、防災技術開発に新たに投入する金額は全体の0.7%程度にとどまる(※2)。国による激甚災害指定は毎年相次いでいるが、復旧・復興が強調され、場合によってはやや後ろ向きの視点にもみえる。しかし本来は、災害発生後の復旧作業に追われるよりも、事前に被害を抑える予防的な取り組みが望ましいだろう。事前の防災を中心とするレジリエンスの強化は、経済安全保障の確保の観点からも要請されることだ。
これらに対する有効な投資を目指すためには、AI・ロボット等の活用を含めて、気象現象の解明やレジリエンスを高める新技術への官民を挙げた研究開発が欠かせない。現在のように世界的に自然災害への関心が高まる中では、地震や台風被害が発生しやすく災害大国とされる日本での取り組みは、貴重な先例となるだろう。「成長戦略」と呼ぶにはややはばかられるが、日本がリード役となり世界に貢献し得る分野として、防災関連投資が注目されよう。
(※1)UNDRR “Global Assessment Report; on Disaster Risk Reduction 2025”(2026年10月29日最終閲覧)
(※2)内閣官房「戦略17分野における『主要な製品・技術等』の官民投資ロードマップ 参考資料」2026年7月21日
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- 執筆者紹介
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経済調査部
シニアエコノミスト 佐藤 光

