介護負担が2倍になったら
2026年10月05日
コメの平均販売価格は5kg当たり3,000円を割り込み、ようやく落ち着きを見せている。しかし、2025年末から2026年初にかけては同4,416円まで上昇し(※1)、価格上昇前の2024年前半と比べて約2倍の水準となった(※2)。コメは日本の食生活に欠かせない主食だが、価格高騰による家計負担の増加は消費行動にも影響を与えた。販売価格がピークに達する前の時点で、既に約2割の家庭が購入量を減らしており(※3)、主食のコメでさえ節約の対象となっていたことがうかがえる。
こうした家計負担への反応は、介護保険制度にも当てはまるかもしれない。現在、一部の介護保険利用者について自己負担割合の引き上げが検討されており、その結果、生活を支える介護サービスの利用控えが生じる懸念があるためだ。
主に65歳以上が利用する介護保険制度では、利用者負担は原則1割で、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割となっている。政府は、このうち2割負担の対象拡大を検討している。現在は所得上位20%程度(単身の場合、年金収入とその他の合計所得金額の合計が280万円以上)が対象だが、基準を引き下げて上位30%程度(同230万円以上)にまで広げた場合、新たに約35万人が2割負担になるとの試算が示されている(※4)。
現役世代の保険料負担は増加を続けており、制度の持続可能性を考えれば、一定の負担能力を有する高齢者に応分の負担を求めることには合理性がある。一方で、先にみたコメの例が示すように、日常生活に欠かせない支出であっても、従来の2倍となる負担増は家計の行動変化をもたらし得る。介護サービスは生活を支えるものであり、必要な利用を減らせば状態悪化や重度化につながる可能性がある。利用控えによって家族の介護負担が増えれば、働く世代にも影響が及びかねない。
そのため政府は、2割負担の対象を拡大する場合、負担増を和らげるための配慮措置も検討している。例えば、新たに2割負担となる人の負担増を当面月7,000円に抑える案や、預貯金が一定額以下の場合に申請で1割負担へ戻す案などである(※5)。ただし、一律の措置では十分な負担能力を持つ高齢者まで軽減対象となる可能性があるほか、申請方式では制度を理解していない人や手続きが困難な人が負担軽減を申請しない懸念もある。
重要なのは、自己負担が2倍になった際に利用控えが生じやすい世帯を見極め、その層に的確な配慮を講じることである。そのためには本来、収入だけでなく、金融所得や預貯金も踏まえ、実際の負担能力に応じて対象者を総合的に判断する仕組みが欠かせない。真に負担能力のある人には応分の負担を求める一方、所得だけでは捉えきれない事情にも配慮し、実情に即した応能負担の仕組みづくりが急務である。
(※1)2025年12月29日~2026年1月4日の週の5kg当たり税込販売価格(農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移((株)KSP-SPが提供するPOSデータ、全国・週次)(令和8年9月25日公表)」)。
(※2)2024年6月までは概ね2,000円前後で推移していた(農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(令和6年9月号))。
(※3)株式会社日本政策金融公庫「米の購入に関する消費者動向調査結果(令和7年1月調査)」(2025年3月13日)
(※4)厚生労働省「持続可能性の確保(給付と負担)について」第136回社会保障審議会介護保険部会 資料2(2026年9月18日)
(※5)脚注4と同じ。
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政策調査部
主任研究員 石橋 未来

