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ドゥテルテ大統領の進めるフィリピンインフラ整備計画

~フィリピン初のスマートシティ開発への期待~

2019年06月19日

金融調査部 主任研究員 依田 宏樹

フィリピンではドゥテルテ政権の下、大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」が進められているが(※1)、本コラムでは中でも政府が注力する大型プロジェクトの一つ、新都市「ニュークラークシティ」開発について紹介する。

ニュークラークシティは、マニラ首都圏の北西120kmのクラーク旧米空軍基地跡を利用して基地転換開発公社(BCDA)が開発を主導する、自然災害に強く、環境に配慮した持続可能な同国初のスマートシティである。敷地面積9,450haもの広大な土地には、政府施設、商業施設、住宅、スポーツ複合施設等が整備され、大学や企業等の誘致も計画されている。

フィリピンでは急速な経済成長により、マニラ首都圏で人口増が続いている。交通渋滞や環境汚染が年々深刻化し、頻発する台風等の自然災害に対する脆弱性も課題になっている。新都市の開発には、マニラ首都圏の近郊に大規模なまちを新たに創ることで、一極集中した人口の分散を促し、交通渋滞等を緩和させる狙いがある。フィリピンは国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の理念を現行の国家開発計画(Philippine Development Plan 2017-2022)に取り込んでいる。スマートシティ開発を含むインフラ整備は、SDGsの目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」(※2)を始めとする複数の目標達成に寄与するものと考えられる。新都市の開発が計画通りに進めば、海外からの直接投資の増大、雇用の創出、そして持続的な経済成長につながるものと期待されよう。

新都市開発には、日本政府が官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)を通じてマスタープラン作成を支援するほか、日本企業もパートナーとして参画するなど、日本が積極的に支援している。新都市とマニラ首都圏をつなぐ鉄道の整備は円借款で行われ、日本企業が設計監理から施工までを担う(※3)。2019年4月には、丸紅、関西電力、中部電力が地場の電力大手であるマニラ電力とともにスマートグリッド(次世代送電網)事業に参画すると発表しており(※4)、電気代が高価なフィリピンにおいて効率的な電力利用のできるまちづくりに貢献すると考えられる。日本は優れた都市開発やインフラ開発の技術・ノウハウを有しており、SDGsの観点からも上述したようなフィリピンが抱える都市の諸課題の解決に大いに貢献できるだろう。

開発は今のところ順調に進み始めている模様であるが(※5)、フィリピンでは政治的な問題等で多くのインフラプロジェクトが停滞した過去もあったことから、2022年の政権交代後に開発が滞るリスクには留意が必要である。また、期待する雇用の創出を生み出すためには、産業エリアへの企業の誘致も併せて進めていく必要がある。新たなスマートシティがマニラ首都圏と結ばれることで、首都圏への人口の一極集中が緩和され、同国の経済・社会・環境面において大きなプラスの効果が生み出されることを期待したい。

(※2)外務省仮訳
(※3)設計監理はオリエンタルコンサルタンツグローバル/片平エンジニアリング・インターナショナル/パシフィックコンサルタンツ/日本コンサルタンツ/トーニチコンサルタントの共同企業体(JV)、施工は大成建設・DMCIのJVと三井住友建設が異なる区間を担当する。詳細は、三井住友建設のニュースリリース「フィリピン共和国、南北通勤鉄道事業工事の契約調印」(2019年1月28日付)、大成建設のニュースリリース「フィリピン共和国・南北通勤鉄道事業CP01工区を受注」(2019年5月24日付)参照。
(※4)詳細は、丸紅のプレスリリース「フィリピン共和国・ニュークラークシティにおけるスマートグリッド事業への参画について」(2019年4月4日付)参照。

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依田 宏樹

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