2025年07月24日
サマリー
◆Scope3排出削減の遅れが企業の事業リスクとして意識されるようになっている。そういった中、国際イニシアチブVCMIが公表した「Scope3行動実践規範」は、目標と実績のギャップに対し、高品質なカーボンクレジットを償却することで対応するという、規律ある活用の新たな道筋を示した。
◆本行動規範は、企業にはScope3削減の困難性を説明しつつ、カーボンクレジット利用で信頼性を示す機会を、投資家には目標未達という結果だけでなく、企業の課題への対応力を評価する新たな視点をもたらす。一方、その前提となる高品質クレジットの確保とその質の評価は、双方にとって共通の実務的な課題となる。
◆この課題は日本企業にとって、より慎重な検討を要する。CCPなどの国際的な品質基準とGX政策下でのJ-クレジットを軸とする国内制度との「二重の価値基準」が、将来の資産価値の不確実性を生み、企業の投資判断を一層難しくする可能性が高いからだ。
◆この不確実な環境下では、固定的な計画に依存せず、将来シナリオを見据え、カーボンクレジット・ポートフォリオを機動的に見直すことが求められる。この柔軟な意思決定のプロセスこそ、今後の企業競争力を左右する基盤となる。
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