サマリー
本稿では、企業の賃金設定行動を年齢階級別・企業規模別に整理し、先行きの賃金動向への示唆を検討した。大企業の賃金設定行動の特徴として、将来的な人材定着を見越し、生産性が低い10代、20代の賃上げを重視する一方、生産性の高い30代の賃金上昇を抑制する傾向がある。中小企業は、大企業と比べて人手不足感が強く、資本と労働の代替性が低いため、従業員の離職防止のために賃上げを行う動機が強い。その結果、30代以降の世代の賃金を上昇させる傾向が大企業と比較して強く見られる。
2023年以降の賃金上昇局面では、大企業は売上高増加率が賃金上昇の原資を賄うのに十分だったが、中小企業では不十分であった可能性がある。中小企業で賃上げのモメンタムを向上させるためには、価格転嫁やデジタル技術活用の進展などを通じて、売上高増加率を高める必要がある。また、先行研究からは、賃金カーブのフラット化が進むと、10代、20代の賃金上昇率を高めても人材定着にはつながらない可能性が指摘される。以上を踏まえると、今後の企業の賃金設定行動は、生産性の高い30代の賃金上昇率をより重視するなど、賃金が生産性に応じて決定される傾向が強まると考えられる。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年12月全国消費者物価
エネルギー価格の低下でコアCPIの伸び率は前月から大幅縮小
2026年01月23日
-
2025年12月貿易統計
主力の米国向け自動車の回復が一巡、25年は資源安で赤字幅縮小
2026年01月22日
-
「飲食料品の消費税ゼロ」「消費税一律5%」の費用対効果と必要性
消費減税ではなく、給付付き税額控除の導入を進めるべき
2026年01月21日
最新のレポート・コラム
-
直近のMBOによる株式非公開化トレンド
事例比較による公正性担保措置の実務ポイント
2026年01月27日
-
大和のセキュリティトークンナビ 第3回 不動産セキュリティトークンとは?(後半)
不動産セキュリティトークンの発行・流通動向、税制
2026年01月26日
-
大和のクリプトナビ No.6 暗号資産制度WG報告と今後の注目点
業界再編や自主規制機関の体制整備、オンラインでの適合性確保に向けた議論が注目点か
2026年01月26日
-
米国アセット・ウェルスマネジメント業界のダイナミズム
~変革を生み出すイノベーションとは~『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
消費税率の引き下げは本当に低所得世帯支援に最適な政策なのか
2026年01月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

