サマリー
本稿では、企業の賃金設定行動を年齢階級別・企業規模別に整理し、先行きの賃金動向への示唆を検討した。大企業の賃金設定行動の特徴として、将来的な人材定着を見越し、生産性が低い10代、20代の賃上げを重視する一方、生産性の高い30代の賃金上昇を抑制する傾向がある。中小企業は、大企業と比べて人手不足感が強く、資本と労働の代替性が低いため、従業員の離職防止のために賃上げを行う動機が強い。その結果、30代以降の世代の賃金を上昇させる傾向が大企業と比較して強く見られる。
2023年以降の賃金上昇局面では、大企業は売上高増加率が賃金上昇の原資を賄うのに十分だったが、中小企業では不十分であった可能性がある。中小企業で賃上げのモメンタムを向上させるためには、価格転嫁やデジタル技術活用の進展などを通じて、売上高増加率を高める必要がある。また、先行研究からは、賃金カーブのフラット化が進むと、10代、20代の賃金上昇率を高めても人材定着にはつながらない可能性が指摘される。以上を踏まえると、今後の企業の賃金設定行動は、生産性の高い30代の賃金上昇率をより重視するなど、賃金が生産性に応じて決定される傾向が強まると考えられる。

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