成果につながる「組み合わせ」はデータで見つけられるか?~ハイパーグラフで読み解く、協働の見えないまとまり~

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2026年10月15日

  • デジタルソリューション研究開発部 スペシャリストグレード 池谷 友弥

「成果につながる『組み合わせ』はどうすれば捉えられるのだろうか」。私はデータサイエンティストとして企業のデータ活用に携わり、人的資本に関わるテーマを扱うこともある。個人のスキルや実績だけでは協働の実態までは見えにくい。誰がどのチームでどんな役割を担い、誰と協力して力を発揮したのか。同じ顔ぶれでも案件や役割分担が変われば協働の形も変わる。人の特徴に加えて複数の活動を通じた関わりを捉える視点が欠かせない。

人や組織の関わりを整理する方法の1つがグラフによる表現である。ここでいうグラフは棒グラフや折れ線グラフではない。人や組織を「点」で表し、その間の関係を「線」で結ぶものだ。「社員」「部門」といった言葉の意味や関係を定める「オントロジー」でも、この表現が使われている。「誰がどの部門に所属するか」などの具体的な情報をつなぐ「ナレッジグラフ」(※1)も同様だ。企業の部門を例にとると、営業と法務をそれぞれ点にし、協力していれば線で結ぶ。ほかの部門との関係も加えれば連携の全体像を見渡せる。

ただし、点や線に何を含めるかで読み取れることは変わる。営業・法務・システムの3部門が1つの案件を進める場合と、「営業と法務」「法務とシステム」「システムと営業」の3組が別々の案件を進める場合を比べてみよう。協力関係の有無だけを線にすると、どちらも同じ三角形になる。部門同士のつながりは分かっても、1つの案件で3部門が協働したのか、別々の案件で2部門ずつ協働したのかは区別できない。

近年ネットワーク研究で注目が高まりつつある「ハイパーグラフ」(※2)は、同じ活動に参加する人や部門のまとまりを直接表す方法の1つである。通常のグラフでは1本の線が2つの点を結ぶ。ハイパーグラフは3つ以上の点も1つの関係としてまとめられる。同じ案件を進める3部門を1つの輪で囲むイメージだ。別々の案件なら案件ごとに参加する2部門を囲む。複数の輪に同じ部門が含まれていれば、その部門は複数案件に参加している。案件ごとの協働相手と案件をまたぐ部門の関わりを捉えられる。通常のグラフでも案件を点にして参加部門と結べば同じ情報を表せる。ハイパーグラフは活動ごとのまとまりを直接扱う選択肢になる。

この考え方を人に適用し、役割やスキルの情報を加えてみよう。誰がどのチームに参加し、誰とどんな役割で協働しているかを整理できる。各人が果たす役割を検討する手掛かりになり得る(※3)。成果データと照らし合わせれば、成果の高いチームに多い組み合わせも調べられる。ただし構造を表しただけで成果の理由が分かるわけではない。何を1つの活動とみなし、参加時期や役割をどう記録するかによって解釈は変わる。記録に残らない協力や案件ごとの難しさも踏まえ、現場の実態と突き合わせる必要がある。

応用先は幅広い。金融では協調融資に参加する金融機関の組み合わせや複数案件に関わる金融機関の役割の分析が考えられる。研究開発では研究者や研究機関の組み合わせと成果との関係を調べられる。AIエージェントが複数の情報源を参照する場面にも応用が考えられる。たとえば、案件や会議に関係する人物・発言・規則・商品などのつながりを構造化して管理することで、文脈や判断の根拠を確認しやすくする活用が想定される(※4)。

分析結果をそのまま個人の評価や因果関係に結びつけることはできない。それでも、個人や2者間の関係だけでは見えにくいチームの重なりや、参加者の組み合わせと成果との関係を考える手掛かりになる。私たちはつい「誰がいるか」に目を向ける。ハイパーグラフは誰がどの活動に参加し、ほかの活動とどう重なっているかを見る視点を与えてくれる。役割の補い合いも含めて捉えれば、成果につながる「組み合わせ」をより具体的に考えられるのではないだろうか。

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