SNS上にあふれる投資情報にどう対処すべきか

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2025年12月22日

大和総研では高校生向けに金融経済教育の出張授業を行う機会があり、家計管理、貯蓄と投資の重要性や金融トラブルに注意すべきことなどを伝えている。25年11月に行った授業で特に生徒が関心を持ったのが、SNS型投資詐欺による金融トラブルだった。SNSで著名人の画像を使って投資勧誘を行う動画が出回っており、実際にそのような動画を見た生徒の関心が高かったようだ。

近年、若年層の間で投資に関する情報をSNSで収集することが広まっており、日本証券業協会の調査(25年4月)によると、30代以下が投資の情報収集源として挙げたのは、インターネット(Webサイト)の31.4%に次いで、SNS(動画・画像系)が23.0%、SNS(文字系)が12.1%となっており、他の年代に比べてSNSの割合が高くなっている(※1)。SNS上の投稿は、分かりやすい動画によって投資に馴染みのない層が投資を身近に感じられるというプラスの側面もある。しかし、SNS上で出回る投資に関する情報の中には、根拠が不十分な情報や、誇張された情報もある。

投資についてアドバイス(投資助言)する際、一定の条件を満たす場合は、投資家保護のため、金融商品取引法によって金融商品取引業者の資格(登録)を取ることが義務付けられており、登録なしに投資助言を行うことは違法行為である。具体的には、投資助言業の登録が求められるのは、助言の相手から報酬を得て株価の見通し等について助言する場合で、不特定多数の者に対して行う場合は該当しない。SNS動画の場合、基本的に相手から報酬を得ておらず、その場合は登録なしに行うことができる(※2)。

ただ、株価の見通し等について根拠不十分な情報が広がるのは、投資家保護の観点からは好ましいことではない。そのため、たとえば欧州のように、相手から報酬を得ていなくとも個別具体的な投資助言には登録を必要にするという形で法改正を行うことも検討に値するだろう。SNSを含め、自分の意見を発信する権利は表現の自由として憲法上保障されている。しかし、SNSでは、クリエイターがフォロワー数を増やすために視聴者の関心を惹くよう極端な主張を発信することもあるので、投資家保護の観点から上記の規制強化は正当化されると考えられる。

なお、登録が必要とされているのは、現行法では、株価の見通し等の個別具体的な助言をする場合に限られている。経済全体の動きや景気の見通しについて発信することは規制対象外であり、表現の自由の保障のため、この点は今後も維持すべきだろう。しかし、実際には、経済動向について解説している場合に、株価の見通しについても助言しているといえるかははっきりしないことが多く、仮に上記の改正が実現しても実際に取り締まることは容易ではないだろう。

そのため、上記のような規制強化がなされるか否かに関わらず、視聴者としては不適切な情報を見分けるために金融リテラシーを身に付けることが重要であることに変わりはない。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希