誰かの幸せが時々つらい。Z世代とみるSNSの変遷
2026年01月28日
誰かの生活や考えが可視化されると、理由もなく胸がざわつく——そんな感情をSNSは育んできた。Z世代の私が使い始めた「前略プロフィール」や「mixi」は、限られたコミュニティ内での交流が主流であった。“友達の友達”までがつながるクローズドな空間であり、SNSは放課後の延長戦であった。
しかし、SNSはオープン化し、次第に赤の他人の派手な写真や、刺激的な意見がとめどなく流れ込んでくるようになった。その変化は単なる技術進化ではなく、私たちの心の温度までも変え、誰かのつぶやきが刃物のように胸に触れることがある。
現代のSNSは地球の裏側にいる人とも容易につながれる一方、現実とは異なる自分を演出できる。このため、SNS上でつながった相手と実際に会ってみると、顔やキャラが違うのではないかと戸惑うことがある。画面の中の自分は編集可能で、いとも簡単に理想に近づくことができる。
例えば「Instagram」の普及が、インフルエンサーが発信する“キラキラした生活が当たり前”という価値観として浸透し、利用者の感情を揺さぶっている。テレビで見る芸能人の華やかな暮らしは遠い世界に感じていたはずが、スマホに映る他人の充実ぶりは、なぜか自分と比較せずにはいられない。
さらに近年は、アルゴリズムによりユーザーごとの世界が作り上げられている。かつて時系列順に並んでいた投稿は、今や“自分が好むであろう情報”が優先的に届けられる。気づかないうちに視野が狭まり、似た者同士で集まる温室のような環境ができあがる。つながりを求めてスクロールしていたはずが、いつの間にか偏った見方に誘われる。
SNSは、本来“つながり”を生み出し、交流を深めるためのツールとして意味があったのではないか?しかし、比較による疲労や他者への無関心、そして価値観の分断といった“課題”も生んでいる。
それでも私がSNSを手放せないのは、そこにしかない“弱いつながり”に救われた経験があるからだ。家族も友人もいない地で独り将来を案じていた夜、『人生は暇つぶし』という一文が沈んだ気持ちをすくい上げてくれた。SNSの本当の価値は、こうした微細なつながりにこそ宿っているのだと思う。
だからこそ、SNSとの向き合い方を今時の環境に合わせてアップデートすべきである。他者の生活を自分の尺度で測らないこと。異なる価値観に出会ったとき、否定ではなく理解できる部分を探す姿勢を持つこと。そして、自分自身も誰かの心の揺らぎを想像しながら投稿すること。そんな態度こそ、次の時代の“つながり”をSNSから得るヒントになるのではないだろうか。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
コンサルタント 杉本 亜門
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